そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

27-2

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学校を辞めるということ
~後編~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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学校を辞めるということがどういうことなのか、正直なところ、当時の私にはその意味がよく分かっていませんでした。いまは実体験を通じて、また、仕事を通じてその意味が少しは分かるような気がします。

まずは、一生懸命働いて学費を払ってくれている保護者への「申し訳ない」という感情です。小学校、中学校はともかく、高校や大学へ行くには学費がかかります。なんとなく高校へは自動的に進学するものだと思いがちですが、そこには保護者のサポートが欠かせません。学費だけでなく、毎日のお弁当から部活の費用まで、学校生活の大半は保護者に頼っています。それを途中で辞めるということは、保護者に非常につらい思いをさせることになるのです。

何か手に職をつけようと資格取得を思い立ったときにも学歴は影響します。高校卒業していなければ受験できない資格もたくさんあります。また、しばらく社会人を経験してから専門学校に入ろうとしたときも、高校卒業の資格や認定がなければ出願できない学校もあります。後々、新しい人生を歩もうとしたときに、学校を卒業していなかったことが大きな壁として立ちはだかることがあるのです。

仕事を探しにハローワークなどに出かけて求人票を探してみるとわかりますが、求人案件には、高校や大学を卒業していることが望ましい、または、卒業を必須の要件として募集しているものもあります。面接の際にも、「何で高校を辞めてしまったのか」と聞かれると思います。学校に限らず、途中で何かを辞めるようなひとを雇うのは会社側も不安があるからです。

だからといって、学校を辞めることがすべて駄目かと言えばそんなことはありません。自分なりの目標や夢のためには、学業を棚上げにしても挑戦したいことがあるかもしれません。いまの一瞬のために自分の時間を使いたいと本気で考えるならば、保護者も理解を示してくれるでしょう。また、仕事に就くときにも胸を張って中途退学の理由を語ることができるでしょう。

「何となく」ではなく、「何のために」をしっかりと持っているのであれば、学校を辞めることも人生の選択肢の1つです。ただ、少し残念なのは“なんとなく”で学びの場を去ってしまい、後になって後悔するひとが意外と多いことです。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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