そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

35-1

35-1
「働く」が難しい
~前編~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:
 更新:

最近、立て続けに地方の高校で講演する機会がありました。毎回、校長先生や進路指導担当の先生のお話を伺うと、これほどまで「働く」が難しい状況なのか、と思わざるを得ません。卒業後、就職を希望する高校生に対して有効求人倍率が1.0倍を下回り、とある県では0.2倍という状況でした。倍率の低さもさることながら、雇用条件も大変厳しいのです。実家があって初めて生活設計が可能な金額が記載されている求人票もたくさんあります。

先日ある県の校長先生とお話させていただきました。昨年度、県内で就職を希望しながらも仕事に就くことができなかった高校生が100名だったのが、このままでは今年度は間違いなく1,500名の高校生が就職できない。校長先生自らが何度もハローワークに足を運び、生徒の就職先を見つけようと努力をしていました。もちろん、ハローワークの担当者も頑張っているのですが、「もうこれ以上は何も出ない」と言われてしまい、生徒の将来を案じておられました。

このような状況を察してか、高校生自身の「働く」に対する意識に変化が見られます。少し前の好景気のときは、「安い給料で働くくらいなら、フリーターのほうが稼げるし、自由である」という声をけっこう聞きました。しかし、いまでは「ちゃんと就職できるように出席と成績を常に意識しています」とか、「景気の問題とかはわからないけど、(就職できる)チャンスが少しでもあるならベストを尽くしたい」などと言うのです。

意識が変わったのは、就職希望者だけではありません。専門学校や大学に進学希望の高校生もまた、「入れればどこでもよい」といった声は非常に少なく、「卒業後に就職できる学校、学部を見つけたい」と言います。

現在、社会全体で「働く」が難しいような状況ですが、大人が雇用対策や産業創出に知恵を絞り、議論しています。高い効果が出るアイディアが生まれ、実行されることを切に願いますが、高校生目線に立って見ると、自分の将来への不安は大きく、「誰か何とかしてよ」よりも、「自分で何とかしなければならない」という危機意識を強く感じます。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

新着記事 New Articles