若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
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「働く」が難しい
~後編~
工藤 啓(くどう・けい)
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学生も「働く」が大変難しい状況ですが、無業である若者にもそれがあてはまります。成長過程のなかで何らかの困難を抱え、社会から一時的に離れざるを得なかった若者も働き先を見つけるのに苦労しています。
とくに、長期にわたる社会的ブランクがあったり、心の問題を抱えていたり、心身の病気にかかってしまっていた若者は苦戦しています。自らの力で困難を克服した若者。社会的支援を受けて課題を解決した若者。彼ら/彼女らが目指す「働く」が本当に厳しい状況です。
ハローワークに通い、ネットで求人情報をチェックする。これなら、と思う企業に履歴書を送っては面接を受ける。最初は、「このような難しい雇用情勢だから簡単には採用に至らないだろう」と分かっていても、求人を見つける、履歴書を送る、面接を受ける、不採用の連絡をもらう、というプロセスが繰り返されるうちに、自信を失っていきます。
社会は自分を必要としていない。
そこまで思いつめる若者もいます。昨今の雇用環境、経済状況に対し、さまざまな提案がなされています。雇用の流動化や規制緩和/再規制、雇用対策、職業訓練、セーフティーネットの構築など。どれも話を聞くと、「そうだな」と思うことばかりです。日本社会が抱える多くの課題を解決できるのならば、早急に取り組んでもらいたいと思います。
私自身が支援をしている若者も同様に「働く」がより難しくなっています。好景気であれば就労できたのに、いまはなかなか仕事が決まりません。それでもまったく希望がないわけでもなく、若者自身と保護者と連携しながら、また、地域や企業とのつながりを活用して仕事に就いている若者もいます。一人ひとりへの支援なので社会的なインパクトは大きくないかもしれませんが、「自分ができることをやる」に尽力しています。
先日、地方の高校で講演した際に、「働く」が難しくなっていることについて触れました。話の終了後に、「少しでも力になれることがあれば微力ながらお手伝いしたいと思っています」、と伝えたところ、4名の高校生が私のところへ来てくれました。皆、就職希望で、就きたい仕事が決まっています。驚いたのは、「もし希望する仕事に就くことができなかったらどうするか」という質問に、それぞれが明確な意思と答えを持っていたことです。これだけ一生懸命な若者に対し、私たちは行動や活動で応えていかなければならない。そう強く思いました。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか