そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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若者はコミュニケーション力がないのか
~前編~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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毎年、いろいろな場所で講演をさせていただく中で、現代の若者の“コミュニケーション力”について質問を受けることが多くあります。コミュニケーションという言葉は学校でも、職場でもひとつのキーワードとなっています。

質問に対して、「コミュニケーション力の有無は若者だからないわけでもなく、大人でも持っていないひとはいると思います」と私は話すようにしています。なぜなら、日常生活をおくる中で、小学生くらいの子どもに「コミュニケーション力があるな」と感じることもあれば、大人同士のコミュニケーションなのに「うまく伝えられない/伝わらない」状況に出くわすことも多々あるからです。

そんな受け答えをすると、会場からは失笑が漏れることが少なくありません。おそらく、大人自身も、コミュニケーション力については若者の問題に限らないと感じているからだと思います。誰もがコミュニケーション力は大事だと考え、そして、自分はコミュニケーション力を備えていると自信を持って言えないわけです。

ただし、多くの企業が新人(若者)に求める人材要件には“コミュニケーション力”を挙げる以上は、若者自身がそれに対して敏感になるのは仕方のないことかもしれませんが、過剰に意識をしてしまうと不安に陥ってしまいます。

実際、一緒に活動をしてみて、とてもコミュニケーションに優れている若者でさえも、「自分にはコミュニケーション力が不足している」と言ったりします。突き詰めて話を聞けば、個別具体的にどのような力が不足していると認識できているというより、漠然とした不足感でしかありません。また、誰かとの比較という意味で言えば、家族や友人など非常に近いコミュニティの中で、自分は力不足だと思い込んでしまっているだけなのです。

私は、若者だからコミュニケーション力がないなどとは思いませんが、大人が若者に対して“コミュニケーション力不足”を嘆く理由に、少しだけ思い当たる部分があります。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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