そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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再学プログラム
~学び直しの機会を創る~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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以前、この場で書かせていただきましたが、昨年より、不登校・中途退学経験者へ学び直しの機会を提供する「再学(さいがく)プログラム」を試行実施しています。先日発表されました内閣府「子ども・若者白書」には、平成21年度間に不登校の児童生徒数が12万2,432名(小学生2万2,327名、中学生10万105名)、高等学校中途退学者数は5万6,948名と指摘しています。

理由は大きく二つ、「学業不振」と「学校不適応(人間関係を含む)」と読み取れます。現状での不登校・中途退学への取り組みは、学習のつまづきに対する補助機能の構築と、不適応に至った課題の解決を目指すことになります。

一方、既に成人した不登校・中退経験者への学び直し事業を試行実施した成果として見えてきたことがあります。それは、彼ら/彼女らは学校という場から離脱したコンプレックスを持っていること。そして、そのコンプレックス解消のチャンスを欲していることです。

参加者へのアンケートとヒアリングでは、特に「英語」と「数学」へのニーズが高く出ています。印象的だった理由として、「駅の券売機前で困っている外国からの旅行者を助けてあげられなかった」ことや、「街中で道案内すらできなかったから基礎的な英語くらいはできるようになりたい」というものがありました。経済のグローバル化やオフショア化というのではなく、日本で困っている外国の方がいれば助けてあげられるようにしたいという声が聞かれました。

数学に関してはこんな声がありました。「僕にとって勉強ができるひとというのは、算数や数学が得意なひとでした。途中で挫折してしまったところをクリアできたら自信になると思うんです」。自分に自信が持てるようになりたいと望む彼は、ひとつのきっかけを数学の学び直しに求めていました。

再学プログラムを立ち上げるとき、過去つまずいてしまった教科や単元の克服機会の提供に注視し過ぎていたことに気が付きました。実際の参加者はいまの自分が未来に向かって歩を進めるための手段として再学プログラムを捉えていたのです。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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