そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

55-2

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人生に区切りはない
~在学中でもインドに修行へ~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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1通のメールをもらいました。都内の大学3年生からです。昨年11月には公認会計士試験に合格し、4年生になる前の3月には内定を貰っています。それも多くの学生が憧れる企業です。メールの文面からは実直な性格で、他者に気遣いと配慮ができるようなイメージを持ちました。

在学中に公認会計士試験に合格し、早い段階で有名企業から内定を得ている学生がなぜ私のところに相談に来るのかはよくわかりませんでした。しかし、興味があったので会ってみることにしました。

彼には夢がありました。日本の未来を変え、誰もが将来に希望や夢が持てる社会をつくりたいという非常に素晴らしい夢です。いつかは自ら起業し、日本社会が抱えるさまざまな課題を持続的な仕組みを持って解決し、夢を実現したいということです。

このような相談を受けたとき、ほんの少しだけ先に生まれた私たちはどのような言葉を伝えるべきでしょうか。在学中に起業するもよし、内定を貰っている企業で経験やネットワークを創るもよし。どのような選択をしても夢につながる手段であり、どれも重要な決断であると私は思いました。

そしてそのようなことを伝えようとしたところ、彼は「すでに卒業に必要な単位を取り終えていますので、インドにある企業で働きながら世界を見てこようと思います。半年ほど」と言うのです。驚きました。長期休みでも、休学でも、学校から与えられたカリキュラムでもなく、自ら主体的に人生を切り開くべく行動し、資格取得も就職(内定)という区切りを自らがつくれるよう考えています。感動すら覚えました。

多かれ少なかれ、誰もが何となくそこに存在している区切りに合わせて生きています。しかし、自らの志や情熱にその区切りが適切でないこともあります。そんなとき、誰かに決められた区切りよりも、自分が信じる道を歩むことを優先し、心の赴くままに行動していく若者たちを私は応援していきたいと思っています。きっと彼ら/彼女らはいまよりもずっと良い、新しい社会のつくり手、担い手になる人材になり得ると考えるからです。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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