そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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フォローアップ
~多様なアクセスルートを確保する~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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学校にせよ、ハローワークにせよ、育て上げネットのようなNPOにせよ、それぞれが提供する支援サービスを経て、次の進路(人生)を決めた方々が順調に生活、成長されることを切望しています。また、何か悩みやトラブルがあったらいつでもフォローする意志を持っています。教育者も支援者も、他者の人生に関わらせていただくことへの喜びと責任感を持っているからこそ、若干うっとうしいと思われるくらいおせっかいです。

しかし、若者が進学先や就職先で苦労するようなことがあれば全力でフォローアップしていく気持ちがあっても、若者の状況・情報が入って来なければ何もできませんので、自分や組織が個々の若者と多様なアクセスルートを確保する努力をし続けなければなりません。

典型的なアクセスルートは保護者でしょう。当事者である若者が10代であれ、30代であれ保護者はわが子を気にかけていますし、同居していればもちろんのこと、実家を出て生活をしていてもそれなりの情報は共有されています。わが子が学校に行っていない、職場とうまくやれていない、最近悩んでいるようだ、という変化を間近で知ることのできる保護者と信頼関係を作っておくことがフォローアップには欠かせません。

進学先や就職先にもアクセスルートを確保します。大学であれば担当の先生やキャリアセンターの担当者など、若者と深くかかわる可能性の高い個人とのつながりを作ります。また、職場であれば社長や上司、同僚などやはり個人との関係性を紡ぎながら、若者を包括的にサポートできるようにしていきます。

若者を取り巻く個人との関係性に着目するものとは別に、最近ではTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアが徐々に一般化してきています。このようなフリーのサービスをうまく活用し、個人間でつながりを持っておくのも新しいアクセスルートになり得ます。書き込んでいる言葉に異変を感じたり、その機能にまったく触れていな期間が長期に渡ったりしたときには、軽くソーシャルメディアを使っても、実際に電話をしたりしても、声をかけてみたらいいのです。

高校や大学の中退者数/中退率を見ても、働き始めた若者の離職者数/離職率を見ても、フォローアップの重要性は非常に高まっています。これまでは誰をどこに進学または就職させたかが問われていましたが、今後は進学や就職を果たした若者がどうなったのか、という部分にも成果の焦点はあたってくるものと思われます。そのときになって「どうしよう」とならないよう、日々の支援業務を常に改善して適切なフォローアップができるように努めていかなければなりません。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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