そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

76-1

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寄付を通じて社会を知る
~お年玉を少しだけ未来のために~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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私には二人の小さな子どもがいます。第一子は少しだけお金の概念がわかるような年齢になりました。「お金とは何か」ということまでは理解できていませんが、何か書いてある紙や丸くて硬いものを渡すと、自分が欲しいおもちゃをもらうことができる、というレベルです。

お正月には、お年玉を祖父母や親せきからもらえます。誕生日は親から、クリスマスはサンタさんがプレゼントをくれますが、お正月だけはお年玉で好きなものを自分で獲得できることを知っているので、一年中、「お年玉をもらったら○○を買うんだ!」と話しています。ちなみに、今年はプラレールの700系新幹線を手に入れていました。

いまのところ、子どもにとってのお金は自分が純粋に欲しいものと交換できる「何か」という位置づけですが、中学生や高校生になると純粋に欲しいものの他に、「何かのために」物品やサービスの購入を考えるようになるでしょう。すぐに物事が調べられたり、友人とコミュニケーションを取るためにスマホを買い替えたり、知識を得るために書籍を購入したり、外出が楽しくなるように洋服やアクセサリーを買ったりと。

せっかくなので、私は目の前にあるお金のうち少しだけ、自分の生活に負担がない金額でいいので、「社会を知るために寄付」してみることを提案したいと思います。大切なのは街頭募金やお店のレジ近くにあるボックスに漫然と大切なお金を投じるのではなく、身近な生活の中で気がついた「問題」を探してはどうでしょうか。

テレビで難病と闘う子どもを見たでもいいですし、ネットで捨てられたペットの行く末を知ったでも構いません。いま東北はどうなっているんだろうとか、自宅の近くにある不法投棄されたゴミについてでもいいと思います。何か「これは問題だな」とか「誰がどうしているんだろう」と感じたら、例えば、「難病」「子ども」「東北」「ゴミ」と検索サイトに入れて、その後に「寄付」と入れてみてください。きっとその問題を解決しようとしている個人や団体が寄付を募っているはずです。

そこでヒットしたサイトをいくつか見ているなかで、ちょっと面白い活動をしているとか、応援したくなるプロジェクトが見つかるかもしれません。そこで留まらず、自分のできる範囲で寄付をしてみると、(個人や団体によりますが)御礼のメールや手紙、ノベルティグッズ、活動報告書などが手元に届くと思います。自分の寄付したお金がどのような活動に変わり、誰/何がどうなったのかが見えてくると思います。

そこで二つの未来が得られるはずです。ひとつは、社会問題が解決されるという未来。もうひとつは、これまで関心のあった課題をいま以上に知っている自分という未来です。大切なのは金額ではなく、新しい一年の始まりにあたって、これまでやってみなかったことにチャレンジしてみた「行動そのもの」に価値があり、その価値が未来の価値を創ることにつながっているということです。

お金はとても大切なものですので、その活用の仕方も改めて考えてみられてはいかがでしょうか。

※寄付を募っている個人や団体に寄付される場合には、慎重に精査をしてください。不安なときには電話をかけたりして、自分が信頼できる先なのかを確認してください。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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