そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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新学期を気持ちよく過ごすために
~環境・心境変化を共有しよう~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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夏休み明けの新学期は、環境や心境が変化しやすい時期です。高校一年生であれば高校という環境に慣れてきたころです。学校の雰囲気や周囲の人間、同級生であれ、先輩であれ、のこともわかってくる頃ではないでしょうか。

高校二年生はそろそろ卒業後の進路を考え始め、高校三年生は残りの高校生活と受験や就職といった新たな世界への準備時期でもあります。また、やや古いデータですが、高校生のアルバイト率は高校一年生が10%、高校二年生が20%程度で、男子にくらべ女子の方が2倍くらい多いそうです。
(出典:Benesse教育研究開発センター『放課後の生活時間調査』)
〔※PDFファイルが開きます〕

中学生の頃よりも行動範囲が広がった夏休みにアルバイトを含めた新しい経験をする。新学期が始まり、日常生活のなかに推薦入試や受験勉強、就職活動が加わるひともいるでしょう。環境の変化はもちろんのこと、心境も変わってきます。何事でもうまくいっていればいいのですが、そうでない高校生もいます。特に高校三年生にとっては卒業後に進む道が具体的に決まってきますので、言葉にできないプレッシャーを感じていることもあると思います。

少し話は変わりますが、新学期が始まる時期は周囲の大人も(高校生に限らない)子どもたちが不安定になりやすいことを知っています。そのため、「何かあったらすぐに/気軽に相談するように」と声をかけてくれているでしょう。私は、さまざまな悩みを抱える若者の支援をしていますが、困っているひとにとって誰かに「相談する」ことは結構難しいことがあります。

誰かに相談をしたいと思ったとき、「何を相談するのかが整理されて」おり、「相談する相手が決まって」いないと相談がしづらいのです。その整理や決断を自分一人でやるのはとても大変です。

そんなとき重要なのは、漠然とした不安、もやもやした気持ちを優しく聞いてくれるひとの存在です。整理されていない気持ちでも、言葉にしていくことで次第にまとまってきます。“一人で悩む”ことや“一人で抱える”ことは、その言葉にする機会のない厳しい環境なのです。

環境や心境の変化が起こりやすい新学期が始まり、なんとなく“もやもや”してそうな友人がいれば、ぜひ、それを言葉にするきっかけとして手を差し伸べてあげてください。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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