そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

85-1

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生活スキルと手抜き
~そこそこできれば何とかなる~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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明けましておめでとうございます。昨年の大きな出来事は8月に子どもが生まれ、家族が増えたことです。それも双子。工藤家は現在「私妻子子子子」の六人と、二匹の犬という大所帯になりました。三人目の子どもができたことがわかってから数か月、妊婦健診に行った妻からLINEで「双子!!」というメッセージが入りました。多胎児は計画できるものではありませんので、自分のもとへ双子が来てくれるとは夢にも思っていませんでした。一卵性なので、いわゆる、同じ顔です。

私は、高校を卒業するまで自宅で家事や炊事をしたことがありませんでした。食事も洗濯も母親がやってくれていました。自分の部屋の掃除くらいが唯一家事といっていいものだと思いますが、整理整頓していたかと言われたら、むしろ、荒れ放題でベッドから手の届く範囲にすべてが置かれている状態でした(最も効率の良い環境であると言い訳をしていました)。

大学生になって、レストランやコンビニ、ラーメン屋、配膳などさまざまなアルバイトをしました。そこで初めて雑巾を洗って干したり、食器を洗ったり、包丁を使って食材を切ってり加工したりしました。

初めてのことばかりで、最初はどうやっていいかもわからず、とにかく包丁を握って切ってみる。指導を受けて改善する。きっちり切るのは最低ラインですが、少しでも早く切れるよう動きを工夫したりもしました。同じことを何度もやると学習効果が働き、少しずつ早くなります。また、まな板と食材の位置を変えみたり、お皿の置き所を作ったりするうちに、自分がやりやすい型が少しずつ作られていきます。もちろん、自分だけのオリジナルなので本当に効率的だったのかはわかりませんが。

大学を中退し、アメリカに留学をしました。ホームステイを選ばず、シェアハウスに住んだため、家事・炊事はすべて自分でやります。誰も教えてくれません。限られたお金で食材を選び、栄養が偏らないようにメニューを組み、調理します。初めての一人暮らしではありましたが、さまざまなアルバイトを通じて、家事・炊事にかかわる基本的なことが“そこそこ”できるようになっていたので何とかなりました。

初めての異国での生活であり、学校の授業についていくのも精一杯でした。しかし、そこそこ生活スキルがあったことであたふたすることなく、落ち着いた留学生活を送ることができました。そこそこできれば何とかなるというのは、一人での生活のみならず、家族が増えたいまも役に立っています。また、そこそこできることで手抜きをする余裕も生まれました。

その話は後編に譲りますが、実家暮らしで生活に少しでも余裕があれば、そこそこ家事や炊事をやっておくことが将来の手助けになります。また余裕がないようであれば、今後、アルバイトなどをするときなど、生活スキルにつながりそうな職種もいくつか経験しておくとよいかもしれません。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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