そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏によるエッセー

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外に出られなくなったら
~友達が外に出られない~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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突然、または、徐々に学校の友達と連絡が取れなくなったらどうしますか。実際に学校で会えなくても、LINEではコメントが来たり、既読マークがついたり。スマホ上でも接点が失われてしまったら自宅に行ってみたりすることもあるでしょう。

最初は自室で話ができた友達も、いつの日にか親から「今日はごめんね」「今日も来てくれてありがとう、でも」と言われるようになり、自宅に行きづらくなってしまい心配だけが募っていくのではないでしょうか。

第一に、そのように友人を想い、できるだけ会えるよう、連絡が取れるようにすることは本当に尊い行為です。仮に本人から「もう連絡しないで」と言われてしまっても、そのギリギリまで友達のために行動し続けたことは、心を痛めている本人やご家族にとって何よりも心強い存在です。

先日、ビートたけしのTVタックルで「すねかじられる親の悲痛な叫び! 高齢化する“ひきこもり”問題」という番組が放送され、大きな反響を呼びました。ひきこもり状態にあるひとの部屋の扉を壊し、中に入っていく暴力的なシーンに対して、“賛否”がわかれました。一方では、破壊的であり暴力的であり、放送するだけの意味があるのか。もう一方では、そうでもしないと出て来ないのではないか、というものです。

自宅から出られないひとはたくさんいます。何も学校に行けない子どもや、若者だけではなく、例えば、寝たきりの高齢者や外出困難な病気の方もそうです。自室から出られなければ、何らかの形でご本人に会いたいとき、まずは電話やメールで「行ってもいい?」と聞きますよね。そこで「ダメ」や「いまはごめん」と言われたら行きません。つまり、本人の同意がなければ、そのときはあきらめます。そこから再び連絡を取ったり、場合によっては自宅まで行きご家族を通じて本人の意向を聞いたりします。

ただ、家族や友達でも会えないとき、ひとつの方法として、ひきこもり状態の方を支援することが選択肢になりますが、日常生活のなかでどういったひとや団体がいいのかはわかりづらいと思います。特に友達として第三者に依頼することなどないでしょう。では、友達ができることは何でしょうか。

私はこう考えます。ひとつは、電話でもLINEでも何か連絡が取れる方法が残っているのであれば、頻繁でなくてもいいので連絡をし続けること。ただ、「出てきなよ」とか「会おうよ」「大丈夫」というものではなく、「おはよう」といった挨拶や、「誕生日おめでとう」「メリークリスマス」「あけましておめでとう」といった、誰にでもかける言葉で十分です。

もうひとつは、もし本人から会ってもいいといった話があれば、友達の状況を気にし過ぎることなく、詮索もせず、いつものように友達同士の話をすればいいのです。

友達同士の何気ない会話は友達でなければできません。それは家族にも、支援団体の人間にもできない、友達であるあなただけが持つ大きな力です。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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