そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

110-2

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進路は誰のもの
~進学でも、就職でもなく~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:

高校卒業後の進路、その多くは「進学」か「就職」かでわかれると思います。学校にせよ、職場にせよ、日本では連続性が意味を持つこともあり、就職を正社員としたとき、それ以外の選択肢(アルバイトやパートで働く)を含めて、「進路未決定」とする学校が多いのではないでしょうか。

私が調べた範囲では、学校の進路が「進学」や「就職」に決められているわけではなさそうです。しかし、連続性が意味を持つ場合、ご家族や先生方も、みなさんの進路について進学か就職という道を一緒に模索されようとします。

そもそも大半の高校生が進学か就職を選択されていると思うのですが、その中にはどちらでもない道を選びたいという学生もいるでしょう。

ある男性は、家庭の事情で進学の道は現実的ではなく、かといって就職を選べるような状態ではありませんでした。心身の調子がよくないことと、もう少しゆっくり考えていきたいことが重なっていました。しかし、進路相談ではそういう選択に対して先生も深く悩んでおられました。

これまで進学か就職という形で大切な生徒を送り出してきた先生にとって、それ以外の選択肢を後押しするような経験がなかったからです。そこで彼は「たちかわ若者サポートステーション」という公設民営の若者支援施設を活用することにしました。

もしかしたら卒業後に支援施設を使うことを進路決定と呼ぶには抵抗があるかもしれません。しかし、学校がそれを進路と認めていることで、その男性は卒業後の進路を決めることができたのです。

就職でも進学でもない、高校卒業時の進路決定を認めた
東京都立秋留台高校〈工藤 啓〉(Y!ニュース)

私がここでお伝えしたいのは、学校が進学でも、就職でもない選択を進路と認めたことが重要なのではなく、みなさん自身が自分の進路、行き先を決めることが大切であり、周囲の言葉や環境は関係がないということです。

そうはいっても、周囲にみなさんの気持ちに理解を示してくれるひとがいないということもあるでしょう。そんなときは、ほんの少しだけ勇気を出して、いつもなら相談することのない大人や専門機関に話をしてみることです。相談に乗ってくれるひとが変われば、リアクションも変わります。ただ、それには少しだけ勇気を出すことが必要です。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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