そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏によるエッセー

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あまり会話をしないひとと話を
~電車の中で生まれるちょっとした会話~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:

みなさんは、電車に乗って席が空いていると座りますか。前にお年寄りや妊婦さん、怪我をしているひと、ヘルプマークに気が付いたら席を譲っていますか。

私もみなさんと同じくらい、気が付いたとき席を譲っていると思います。そのとき、「すいません」と申し訳なさそうに言葉をいただくと、何となく居心地が悪いです。座席に腰を下ろすだけのことに、そのような感情にさせてしまっていて申し訳なく思ってしまうのです。「ども!」くらいの軽い感じだといいのですが。

以前、小さなお子さんを連れた女性に席を譲りました。お子さんが「座りたいー」と言ったことをなだめていました。それだからなのか、ちょっと申し訳なさそうな表情をされていたので、「お子さん何歳ですか?」と声をかけてみました。

すると、子どもが自分の年齢を私に教えてくれ、それをきっかけに5分くらい子育て話をすることになりました。ちょっとした育児の工夫について教えていただきました。

高齢者の方とも同じようなことがありました。「すみません」と言われながら、座られているときに目が合い、私は「どちらに行かれるんですか」とお聞きしてみました。その近隣でずっと生活をされている方で、そのあたりの昔の情景を教えてくれました。

窓の外を見れば綺麗な家や建物が立ち並んでいますが、以前は何もない場所だったというのが信じられないほど。この数十年で景色は変貌を遂げたことを知ることができました。

電車内で誰にでも声をかけているというわけではありません。ただ、ふとしたときに一声かけることが、日常生活の中で出会うことのないひととの会話となり、知らないことを知るきっかけになったりします。

まったく見知らぬ同士が話をするのは、何かきっかけがないと生まれません。突然話かけたら不審なひとに思われてしまうかもしれませんが、座席を譲るときや、落とし物を拾って渡したとき、「すいません」「ありがとうございます」に一言だけ付け加えると、会話が生まれることもあります。

そう言われてもすぐにやろうとは思えないかもしれません。しかし、もしそのようなシチュエーションで一声かけられたとき、何となく話をしてもよさそうなひとだと判断できたら、ちょっとだけ会話を紡ぐことにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。そういう積み重ねがみなさんの人生を少しずつ豊かなものにしていくと思います。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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