そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏によるエッセー

115-1

115-1
だからこそ、相談を
~相談のための相談でもいい~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:

いま、ニュースで孤立したひとをめぐっての事件報道が流れています。みなさんも、「なぜだろう」「どうしたらいいのだろう」を考えているかもしれません。

キーワードとして「ひきこもり」や「ひきこもりがち」というものがたくさん出てきます。最初に、ひきこもっている状態の個人が犯罪を起こすようなイメージについては強く否定しておきます。今回は、社会や地域から孤立した個人が注目されていますが、だからといって同じ状況のひとが犯罪を起こしたり、犯罪に巻き込まれたりする、ということは誰にも言えないからです。

もしかしたら、40代や50代の大人が誰とも話すことができなかったことについて、本人や家族の問題と考えるかもしれません。しかし、年齢に限らずいつ誰が孤立したり、つらい状況になるかはわかりません。そのひと、その家族の問題にしてしまうのではなく、誰にでも起こり得ることなので、そうなっても安心できる社会であることが望ましいと私は考えてます。

進路について何かあれば、いつでも相談するように言われているかもしれません。何かあれば相談しようと思われているかもしれません。ただ、「相談をする」という行為は意外と難しいものです。相談をする前には次のことが必要です。

①相談したいことを整理する
②相談したいことを言葉にする
③相談すべきひとを明確にする

困っていることの理由が明確であるといいのですが、多くの困りごと、悩みごとはいくつかの理由が複雑に絡み合っています。

実際にあったこととして、進学するかどうかに悩んでいた高校生から話を聞いたとき、解決すべきことが複数ありました。ひとつはお金の問題。学費をどうするか。ふたつ目は親の理解。親が進学に反対していました。みっつ目は学力で、受験合格にいたるにはかなり勉強をがんばる必要がありました。

そして、三つそれぞれを一つずつ解決していくのですが、最初に話を聞いたときは「お金がない」というもので、いろいろ話を聞いていくなかで整理され、言葉となり、それぞれの困りごとを解決するにはどうしたらいいかを考えました。

いま大きな悩みや不安がなくて、誰かに相談する必要はないかもしれません。もし、悩んだり、困ったりしたとき、一番に考えてほしいのが、「相談のための相談をする」ということです。なんとなくもやもやするときも同じで、相談するかどうかも定まらないときくらいから、周囲に話をしてほしいのです。

それで特に悩みも不安もやっぱりなかったというのであれば何よりですし、自分ひとりでは考えつかなかったことを見つけることがあるかもしれません。いまは困っていない、だからこそ、相談をするというのは、困らないための第一歩だということです。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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