そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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子ども食堂について
~子ども食堂を知ってますか?~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:

子ども食堂という言葉を聞いたことがありますか?ニュースでよく使われる説明としては、子どもに無料か低額で食事を提供する場所です。いま、子ども食堂は全国に約3,700か所あり、小学校6校に一か所くらいあることになるそうです。ものすごい数だと思いませんか。

子ども食堂1.6倍に 3700カ所、6校に1つ
(日本経済新聞・2019/6/27)

子ども食堂は、何かカチッと決まった形があるわけではなく、大人も子どもも集う場所もありますし、レストランや食堂がやっていることや、NPOや地域のボランティアが主体となっているところもあります。

やっている時間や日にちもバラバラです。ただ、経済的な理由や、両親の帰りが遅いためひとりでご飯を食べる(孤食)ことなど、子どもたちの食事について少しでもよい環境を作ろうと思ったひとたちが立ち上がって、作られている大切な場です。

ただ、子ども食堂は、満足に食事がとれない子どもたちに温かいご飯を提供するだけではありません。むしろ、本当の理由は地域のひとたちが集い、つながりを作ったり、そこで知り得た誰かの困りごとを解決したりもしています。

ひとは困ったときだけ、誰かをすぐに頼れるわけではありません。みなさんも同じかもしれませんが、相談があるときは親や友人、先生など、信頼関係ができている近いひとに悩みを打ち明けるのではないでしょうか。

もちろん、体調が悪ければ医者、法律的なものであれば弁護士、事件や事故であれば警察など、ある困りごとに対する専門家もいますが、「なんとなく困っている」「もやっと悩んでいる」「専門家に相談することかわからない」ということもあるでしょう。

その意味で、子ども食堂が何か明確な理由を持たなくてもひとが交流し、そのなかで知り合ったひと同士が信頼を形成し、何かあったら相談に乗る。さらっと悩みを打ち明けてみる。そして、何もなければ話して笑う。話さなくても、笑わなくてもいい。そんな場所が全国にたくさんできてきています。

なぜ、こんなにも子ども食堂が増えているのでしょうか。それはそこにお腹を空かせた子どもがいるからというのも理由ですが、誰もが明確な理由がなくても集まれる場所。集まらなくてもいい空間—それは「居場所」とも呼ばれることがあります—を無意識に求めており、それに気が付いたひとたちが無理のない形で、それぞれがやれることを持ち寄って始められるからこそ、これだけの子ども食堂が増えているのだと思います。

もちろん、誰のためでもいいのですが、自分で動ける範囲が限られる子どものため、というのが誰にでも受け入れられやすいということもあるでしょう。これだけ全国に広がっていながらも、まだ子ども食堂についてあまり知らないというひともいるかもしれません。みなさんの近くに子ども食堂があるのかどうか、一度調べてみてはどうでしょうか。もしかしたら、本当にすぐ傍にあるかもしれませんよ。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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