そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏によるエッセー

119-1

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「やってみる」に制約がなくなった
~働けないけれど、ビジネスを始めている~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:

10代から20代前半の若いひとたちにとって、とりあえずでも「やってみる」という物理的な制約、心のハードルが軒並み下がっているように感じています。

成功するのか、失敗するのかわからない。やってみたいけどなんだか不安。そういったものは年齢にかかわらず存在するのですが、30年、40年と生きてきたのに、誰かに理由を聞かれているわけでもないのに、できない理由・やれない言い訳を自分自身について、結局、やってみないままにしてしまいます。

そういうときは、だいたい後で自己嫌悪に陥ることがわかっているので、やってみることをちゃんとやってみるように意識しています。

そんな自省する自分と比べ、若いひとたちの「やってみる」を軽やかに実行する姿を見て、このようなチャレンジがそのときのうまくいった行かないを問わず、将来の選択肢を増やし、人生の幅を広げていくのだろうなと感じます。

先日、絵を描くことが好きだという女性がいました。好きな絵を仕事にするまでは考えてはいないけれど、自分がどのような仕事に就いたらいいのかわからない。異性や年上のひとと話すことが苦手で、職場で働いている自分が想像できないそうです。

私は働きづらい環境にある若者を支援するのが仕事ですので、手掛かりとして自分が好きであったり、趣味として楽しんでいたりするものをどのように未来につなげたいのかが気になります。もちろん、それで「就職」しなくてもいいわけです。

すると、彼女は既にLINEスタンプを制作し、複数のスタンプを販売していると言います。どれほどの売り上げがあるのかはわかりませんが、ご自身の作品を創造し、世界に向けて販売をしています。私からすればひとつのビジネスを自分の手でスタートさせているという驚くべきことなのですが、そういう感じは全然なさそうです。

一般的に「働く」と言えば、アルバイトにせよ、就職にせよ、どこかの店舗や企業に雇ってもらい、働いた分の対価を給与としてもらいます。むしろ、自分でビジネスを始めるなんてすごいことだという認識です。

それを彼女はさらっとやってのけているわけです。それで十分なお金が入るのか、安定した収入になるのかというのは別の話です。私がこのような若者たちを凄いなと思うのは、就職することの他に、自分でも収入を作る(売れればですが)という選択肢を持っていることです。「やってみる」ことへのハードルの低さ、チャレンジへの軽やかさに、次の世界を作る若者たちへのうらやましさすら感じます。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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