そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏によるエッセー

120-1

120-1
頼る力、甘える力
~学校の先生の持つつながりを借りる~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:

自分の力で解決することが難しい問題に直面することは誰のみにも起こります。自分で解決しようとすることも大切かもしれませんが、その問題がいまの自分で解決するには大き過ぎること、時間がかかり過ぎることもあります。

何でも独力で解決したいひともいるでしょうが、本当に困ったとき誰かを頼ることや、ときに甘えることも重要です。助けを求めたり、助けを受けたりする力を「受援力」と言います。もしかしたら「そんなことは簡単だ」と思われるかもしれません。しかし、とても大きな問題、複雑な問題に直面し、困り切ったとき、ひとはなかなか受援力を発揮できなくなります。

周囲には他のひとの力をうまく借りながら物事を進めていくような友人などがいるかもしれません。それを「要領がいい」と呼ぶこともできますが、「受援力」が高いと表現することができます。

以前、私の母校である高校の校長先生(卒業してから知り合いました)から突然メッセージが入りました。生徒のひとりが社会問題を解決するためのアプリを制作しているので、一度会ってほしいというものでした。

当日、校長先生から紹介された学生と、その友人で別の高校に通う学生の二人と会いました。私自身はITに強いわけではなく、ましてやアプリを作ることなどはできません。しかし、話を聞いてみると、技術部分ではなく、取り組む社会問題に関する相談でした。

彼らの構想を「ふむふむ」と聞きながら、私にできる助言をしました。しかし、技術部分や資金調達などはわかりません。そんな私の表情を察知したのか、学生のひとりが「もしよければ技術がわかるひと、投資家の方を紹介いただけませんか」と言います。

とても自然な問いかけに、私自身も自然に「誰がいいだろうか」と頭の中でよさそうな友人を探し描いていました。校長先生に相談し、私に相談し、私から他のひとを紹介してほしいという話に、私はすごく良い意味で「とても頼る力のある学生だな」と感心したものです。

年齢にかかわらず、他者に頼ることがとても上手なひとはいます。何か支援を得るためであれば「受援力」と呼ぶ力です。これは生まれ持った性格などもあるのかもしれませんが、私は遺伝的な話よりは、断られたりすることを含めて、子どもの頃から困ったときにどうしてきたのかという経験(環境)が大きいように考えています。

困ったときは家族や近しい友人に相談するひとは多いと思います。しかし、その自分をよく知るひと、そのつながりだけでさまざま問題を解決できるとは限りません。そんなとき、あまり親密でないひとや、見知らぬひとにもうまく、自然に「頼る力」を持っておくことが、生きやすさのようなものにつながるように思います。

特にこの時期は将来につながる意思決定の瞬間が多く訪れるかと思います。失敗したり、断られたりするかもしれませんが、このひとだということがあれば頼ってみる、力を貸してもらってみることにもチャレンジしてほしいです。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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