そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

121-2

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学校と社会の間で
~目的とつながりを大切に~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:

先日、少年院に入っていた経験のあるひとに話を伺いました。

印象的だったのは、少年院を出た後、未来に向かって歩くことができたのは「目的」と「つながり」があったおかげという話でした。

その方は、働く先の未来や希望が見えなくなり、なんで働いているのかという目的を見失ったことがありました。働く目的はひとそれぞれなので、自分の成長でも、生活していくためでも、なんでもいいと思います。

しかし、ときにひとはその場所で働く意味や目的を見いだせなくなることがあります。そのとき、そこで働くこと、そもそも働く理由というものが、自分の人生の目標の下に紐づいていると、何かあったときに戸惑うことが少なくなると思います。その方はとにかく楽しみたい、面白く生きたいという自分も目標に支えられたと言います。

また、ひとは困ったときほど他者に相談することが難しくなります。ちょっとした悩みなら家族や友人に話すかもしれませんが、前回書いたようにちょっとずつ他者と話すことが怖くなることもあります。

そんなことがあるんだと考えると、かなり言いづらい、話すことをためらうようなことでも、安心して相談できる「つながり」を作っておくことが重要です。いまそういう友人や知人がいれば、そのつながりを大切にしてください。そして、もし本当に困ったときに相談できるひとがいないと思ったら、そういう関係性をこれから作れるように意識しておくことと、もうひとつは相談機関を事前に調べておくことです。

社会には多くの公的な相談機関があります。そういう機関は相談することにお金もかかりませんし、さまざまな社会的な支援の情報を持っています。

困ってしまうと落ち着いて相談先を探すことが難しくなるというのは、実際にそうなったひとたちの声からわかっていることです。そうであれば、いまのうちに「どんなところがあるのだろうか」「家の近くにあるか」「スマホから話を聞いてもらえるか」ということを調べておくと、いざというときの戸惑いがなくなります。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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