若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
123-1123-1
少し息苦しいときには
~地域の支えを利用してみよう~
工藤 啓(くどう・けい)
公開:
新型コロナウイルスの影響がまだまだ残るなかで、多くのひとがとても不自由な生活になっています。テレビやニュースでは、連日感染者数などが取り上げられています。また、私たちが日常的にマスクをするなど、かつてない変化のもとで暮らしています。
私は、若者や子どもたちを支える仕事をしています。パソコンを持っていない、自宅にインターネットがない、勉強する機会や場所を探していたり、家族関係がちょっとよくないという高校生の相談も受けています。
そのような活動をするのもNPOなのですが、多くの財団や企業などがお金を出し合い、ときに広く寄付を募って、NPOに助成金を出しています。助成金という言葉の通り、資金面から活動を支えています。
助成金を使ってひとを支えたいNPOは、提示された書式に則り申請書を書いて送ります。それを複数の選考委員が審査をして、限られた助成金をどこのNPOに託すかを決めています。
その選考委員を私も引き受けることがあります。この新型コロナ感染症で不自由な暮らしを強いられるひとたちのために、全国から100以上の申請書が集まり、審査をします。その活動の対象には、本記事を読んでいる高校生も支える対象になっているものがあります。
例えば、十分な食事をすることができない家庭に食材を提供したり、宅配したりするものもあります。住まいを失ったひとたちに、住居を提供するひとたちもいます。なかなか集まって勉強を教えることが難しいので、インターネットを使った無料の学習サポートなども多く見られます。
みなさんは、まだ高校生年代で家族や保護者とともに暮らしているひとが多いのではないかと思います。もしかしたら、暮らし向きが厳しくなり、家族が少しずつ息苦しさや生きづらさを感じているかもしれません。
そんなとき、みなさんの住んでいる地域で、困っているひとたちを支えようと、お互いに支え合おうとしている活動を探してみてはどうでしょうか。
私自身がそのような活動をしていて常に感じるのが、困っているひとがいることはわかっている。しかし、どこにいるのかはわからない。そして、なかなかうまく出会うことができないというものです。特にいまは自由に外出して、ひととひとをつなぐことも簡単ではありません。
そのため、ちょっと困っている、少し息苦しいというひとから連絡があると、つながれたこと、そして直接または直接でなくても、役に立てるかもしれないという可能性が生まれます。
私たちは、すごく困ったり、とても苦しくなり、追い詰められて初めて助けを求めることがあります。しかし、本当に追い詰められてしまう前であっても、助けが必要であれば言ってほしいと思って活動しています。
たくさんの申請書を読ませてもらい、本当に多くの活動が全国各地でなされていることを私は知っています。そして、もしみなさんがちょっと苦しいなと思うことがあれば、何か身近で相談できそうな場所を探してほしいと思います。
それはみなさん自身のためでなく、家族や友人のためであっても、本当に大きな助けになるはずです。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか
《参考サイト》 ※他にもたくさんの助成金と、採択団体と活動内容があります
■コロナ給付金寄付プロジェクト
https://corona-kifu.jp/
■ゴールドマン・サックス「緊急子ども支援基金」
https://www.info.public.or.jp/gs-kodomo/