そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏によるエッセー

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居場所を見つける
~なぜ居場所が必要なのか~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:

居場所という言葉を調べると、だいたい「ひとがいるところ」という意味と、「心を休める、活躍できるところ」という意味が出てきます。みなさんには居場所がありますか。

多くのひとは「家庭」と「学校」の二つの居場所を持っているのではないでしょうか。近い未来には「学校」が「職場」になるかもしれません。この二つの場が居場所となりやすいのは、一日の大半の時間を過ごすためです。

そう考えると、家庭や学校が心休まらない場所であると苦しいですね。また、私は仕事柄、居場所を失った若いひとも出会います。居場所がないことで、多くの時間を孤独に過ごすことになったり、不安や戸惑いが大きくなったりします。

子どもにも高齢者にも、そして若者にも居場所の必要性が叫ばれるのは、居場所がないとしんどいことが多くなるからです。

私は大学で講義をしているのですが、今年度の講義はすべてインターネットを経由して行っています。大講義は受けやすくなっていると言う学生もいますが、大学という物理的に通う空間がないのは苦しいようです。

これまでは大学のキャンパスで友人と話し、部活やサークルに出ていたので、それ以外の連絡はスマホ経由でもよかったのでしょう。しかし、いまはすべてがパソコンやスマホの画面越しとなり、自宅という場でほとんどの時間を過ごさないといけません。

大学という場が閉ざされているいま、自宅と学校以外の居場所を持たない学生は、自宅が唯一の場になっています。そのなかでも心や身体の安定やリフレッシュになっているのが、アルバイトやボランティア活動、習い事や趣味など、大学以外の居場所です。

ある学生は、大半の時間を自宅で過ごしていますが、子どもたちの生活や学習を支えるNPO活動が、外出のきっかけであり、心が休まる時間だと教えてくれました。また、別の学生は週何回か友人と集まってフットサルをしたり、安全な環境で食事をともにすることで生活のバランスをとっているそうです。

このような自宅と学校、または職場以外で自分が楽しく過ごせる場所の大切さが、コロナ禍のなかで再認識されています。高校生活が終わるとき、学校という大きな居場所を離れることになります。

その先にあるのが大学や専門学校なのか、職場なのか、それ以外のものなのかはわかりませんが、みなさんが「心休まる、活躍できるところ」をひとつでも、ふたつでも作っておくことで、居場所が居場所として機能しないことがあっても、他の居場所がみなさんを支えてくれるはずです。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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