若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
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居場所を見つける
~どんな居場所があるのか~
工藤 啓(くどう・けい)
公開:
みなさんにひとつでも、ふたつでも居場所を作ってもらいたいと前回書きました。そうはいっても、これまで自然にできていた居場所が多いと、具体的な見つけ方で迷ってしまうかもしれません。
地元でアルバイトをすることや、中学高校時代の仲間とのつながりを持っておくこと以外にも、こんな居場所があるという例を紹介したいと思います。
学生を応援するNPOや企業が作ったオンライン上のキャンパスは、出入り自由で全国のどこからでも参加できます。進学予定であれば、進学先のキャンパスがひとつの居場所だとすれば、TSUNACAMはもうひとつのキャンパスになるでしょう。
いままで異なる生活空間にいた同年代との出会いは、同じ大学や地域のつながりが新たに生まれることも、これまでだったら交わることのなかったひとたちとの交流が生まれるかもしれません。ウェブサイトにある「出入り自由」という言葉は、ちょっと参加してみることのハードルをぐっと下げる配慮がうかがえます。
学生のみならず、たくさんの大人も一緒に作っている居場所だからこそ自由闊達なコミュニケーションが生まれるように思います。
「ワーク」と「キャンプ」を掛け合わせたワークキャンプをご存じでしょうか。ここではNPO法人good!を事例に出しましたが、日本にはいくつものワークキャンプ主催団体があります。
自分が知らない場所に行き、その場所で暮らすひとびととともに、参加者が「ワーク」を通じて新たな経験やつながりを獲得していきます。どちらかと言うと海外ワークキャンプが有名ですが、国内でも実施されています。
私も学生にワークキャンプという居場所づくり、経験獲得の機会があることを伝えています。ひとりで新しい土地に行って得られる経験とは異なり、その地域のひとたちと汗を流し、参加者同士で課題を解決する機会は、居場所づくりと成長に適した環境と言えるでしょう。
これは私の主催する育て上げネットで10月まで行っていたプログラムです。社会にはアルバイトや正社員という企業などに所属する働き方以外でも、たくさんの「はたらく」が生まれています。
ウェブサイト制作、システム構築、動画編集、自身の作品を販売するなど、さまざまな「はたらく」を知り、実際に手を動かしてチャレンジしてみる機会をオンライン上で提供しました。
全国から若者が参加し、30名の定員も3日ほどで埋まりました。先日、最終プレゼンがあったのですが、不安のなかで参加を決めた若者たちがオンライン上で協力しながら、自分らしい「はたらく」を経験しました。
本当にたくさんの才能や可能性に触れさせていただきましたが、それに一番気づいたのは参加者自身だったのはいうまでもありません。
今期のはたらくスタートアッププログラムは終了しましたが、11月からはアトオシ・オンライン ~若者に「はたらく」道筋を~がスタートします。学生も参加できますので、興味があればサイトをのぞいてみてください。
ここでは3つの居場所づくりの事例をあげましたが、みなさんが参加できるものはたくさんありますので、自分が楽しそうだなと思うものを探してみてください。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか