そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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合格祝いと、進学にあたって
~新生活前に考えてみてほしいこと~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:

育て上げネットの事務所にも、続々と中学生、高校生から進学希望先への合格報告が入っています。希望の進学先に決まった方、おめでとうございます。また、もう一年勉強することに決めた方も、第一希望でない場所で学びを継続される方にとっても、よい一年になることを願っています。

私は、一年浪人して大学進学が決まりましたが、すぐにアルバイトを探しました。高校時代はずっと部活だったので、働いてみたい気持ちがとても強くありました。特にいまの学生は、自由に使えるお金以上に、生活のため、学費のためにアルバイトをしなければならないという方も多いでしょうから、ひとによって「働く」理由は異なると思います。

受験にあたって、本当に大変な一年だったはずです。世界中が大きな変化を迫られるなか、さまざまな情報やルールの変更など、心穏やかに勉強に集中することは難しかったはずです。それでも、誰も経験したことのないなかで学業や部活をやりきった経験は、みなさんの未来の大きな糧になると信じています。

▲資料出所:総務省「労働力調査」
https://www.stat.go.jp/data/roudou/index.html

受験勉強から解放され、新しい暮らしを迎えるにあたって、期待に胸を膨らませていることかと思います。しかし、それでもお伝えしないといけないことがあります。来年度以降の新生活のなかで、アルバイトをしなければならない方にとっても、アルバイトを始めたい方にとっても、まだまだ厳しい状況が続きそうです。

上の図にありますように、アルバイトをする学生にとっては、考えなければいけないことが多いです。学生の多くが選んでいたアルバイトには、飲食店や宿泊業など、新型コロナウィルスの影響をいまも強く受けている業種があります。

仮に採用されても、自分が希望する日時や頻度で働けるかどうかは不透明です。早く落ち着いた社会、経済に戻ってほしいですが、現状では働きたい学生がシフトに入れないなど苦しい状況があります。

もしかしたら、ここでアルバイトしたいなとか、あの仕事をしてみたいという希望があったかもしれません。しかし、希望の職種や業種によっては、シフトに入りづらいばかりか、採用していない可能性もあります。

私が若者と話をするなかで感じるのは、当たり前のことですが、自分がいま知っている仕事から、働きたい場所を選びがちだということです。中学生や高校生だとどうしても見えている仕事は限定されます。それは大人でも同じですが、これまで働いた経験、アルバイトという形で見えている仕事は限られます。

だからこそ、これからの新生活でアルバイトをすることも考えている方には、それまでの間に少しでもいいので、自分が知っている仕事以外で、学生のアルバイトを募集している業種や職種を探してほしいです。

ネットで調べたり、先生や家族と話すだけでも、きっと知らなかった仕事を見つけるきっかけになるはずです。働きたいけど働けない環境が広がるなか、それでもみなさんの力を心待ちにしている職場がきっとあります。

大きな変化に対して、ご自身の希望と社会の変化がもたらしたものの差分について少し思いを巡らすこと、この時間を大切にしていただきたいと思っています。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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