そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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合格祝いと、進学にあたって
~進学から卒業までかかる費用を考えて~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:

私は、大学などへの進学を目指す方の奨学金について審査委員をさせていただいております。奨学金の申請をされている方もいらっしゃると思いますが、もしご家族が学費や生活費をサポートしてくれるという方にも、一度、進学から卒業までにどれくらいのお金がかかるのかを考えてみていただきたいです。

ひとつは、新型コロナウィルス感染症によって、働くひとに大きな影響が出ています。それによって、在学や進学が難しくなったという学生がたくさんいます。問題がないに越したことはありませんが、いざというとき「どれくらいお金がかかるのか」を知っておくのは、気持ちの面でも大きな準備になります。

もうひとつは、何かあったときのために給付型の奨学金の情報を調べておいてください。本来奨学金は給付(返さなくていいもの)ではないか、返済するのは教育ローンと言いたいところです。しかし、実際にはどちらも「奨学金」となっています。

奨学金は、これから所属する大学が学生のために持っているものや、企業が出しているもの、そして公的なものがあります。ここで細かく説明することはできませんが、その条件は多様で、かなり多くの人が誰でも申請できるものから、「〇〇の状況のひと」という条件付きのものもあります。

みなさんが考えている以上に、奨学金の種類はたくさんあります。いま、ご家族などが「お金の心配をしなくていいよ」と言ってくれる環境にあることはとても幸せなことですが、将来どんなことが起こるかわからない、というのはこの一年間で私たちが強く学んだことです。

少し話は変わりますが、コロナの影響を受けたひとたちに対して、国や自治体はたくさんの支援を準備しているものの、なかなか必要なひとに情報が届かないという課題があります。

私も、困った状況にあるひとたちを支える活動をしていますが、ひとは困ってしまう状況になると、なかなか落ち着いて情報を調べたり、電話やメールで問い合わせたりすることができません。

先々に何があるかわからないからこそ、いま大きな困りごとや不安がないようでしたら、いまのうちに、学生として生活していくためのお金のことや、ご家族など支えてくれるひとたちに何かあったときのための情報を眺めておいていただきたいです。

進路が決まってほっとしているかもしれませんし、これからやるべきことが残っているかもしれませんが、高校を卒業した後の進路を考えられる時間的な余裕ができましたら、少しの時間でいいので将来何かあったときのためのことを考え、調べておいてください。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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