そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

130-1

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「時間」を捉える
~やりたいことをするために~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット
山﨑 梓(やまざき・あずさ)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:

大学生活のほとんどをボランティア活動に集中した私の話し相手は、自分より少し年上の人生の先輩方でした。

ほぼ毎日のように、熱意だけある大学生の話に耳を傾けてくれたうえに、ご飯までおごってくれた先輩には頭が上がりません。無償の愛とはこのことだと思います。

さて、話は変わりますが、そんな先輩はみな、口をそろえて「学生にはお金はないけど時間がある」と私に話していました。私はたまたま、その「時間」の多くをボランティアに費やすことができました。

正直なことを言えば、ボランティアがしたかったわけではありません。

ボランティアできる週末の2、3日に最高のパフォーマンスを発揮できるようにする、より良い活動になるよう日々備える。そんな、今までは自分の思考の外にあった「新しい」経験の機会がここにあり、自分自身がそれを享受している実感があったからこそ、他よりも優先するモチベーションになっていたのだと思います。

この大学4年間の経験が人生の価値観や考え方を大きく変え、いまでもNPOという近しい場で社会に貢献しようとしています。

「時間」をうまく使うことができたのは、他のことに「時間」を割かなくても良かったからで、例えば、生計を成り立たせるために働かなければならない、日々の生活を守ることに使わざるを得ないということもあります。

ただ、せっかくの「時間」なので、これまで経験をしてこなかった「新しい」ことに費やして欲しい。自分に適していることを今持っている物差しだけで測らないようにして欲しい。そんな想いを思って、育て上げネットでは「テンセイ・キャンプ」というプロジェクトを準備しています。

「学生にはお金はないけど時間がある」という先輩たちの言葉は、自分が大人になってみて改めて感じています。ただ、お金がないのが原因で「やりたかったこと」を諦めてしまうなら、そのお金の部分をどうにかしようというのがこのプロジェクトの狙いです。

現在、この活動を応援してくださる方を募集しているクラウドファンディングを行っています。今回の活動は大阪にお住まいの方だけになってしまうのですが、すでにたくさんの方が応援してくださっていて、若い人を支えたいと思っている方の後押しを感じています。

コロナ禍での制限が増え、やらなければならないことも増えているいまは、時間も無くなってきている印象は否めません。すべての人が環境適応できることはありえませんので、勝手なことを申し上げれば、学校以外のことを優先できるように「いまは休む」という選択肢もあると考えています。

つい最近、大人をドキッとさせた「人生100年時代」という言葉があります。寿命がどんどん延びてきていて「学び」の考え方も少しずつ変化して、生涯学び続けていける社会に作り替えていこうとしています。

ぜひ、ご自身の「いま」を大切にしてくださいね。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか


認定特定非営利活動法人
育て上げネット 広報担当マネージャー
山﨑 梓
1990年生まれ。2010年から学生ボランティア団体で災害救援活動や地域貢献活動に参加。卒業後に育て上げネットに入職。ユースコーディネーターとして支援に関わりながら調査・研究を担当。現在は広報・寄付担当マネージャー。行政・自治体の若年無業者向けの支援に関わる技術審査員等歴任。共著に『若年無業者白書2014-2015』(バリューブックス)

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