若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
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知らないことと向き合う
~令和時代の情報収集のコツ~
山﨑 梓(やまざき・あずさ)
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前回は「知らない」ことが苦手意識につながったり、自分をネガティブにしていることがあるとまとめてみました。
現代は「情報」にあふれています。YouTubeには毎分500時間分の動画がアップされているそうです。あまりに膨大で想像もつきません。それだけに情報の真偽に気を付けて、ともよく言われますよね。フェイクニュースの問題も深刻になっています。
みなさんは「知らない」ことに出くわしたとき、どうしますか?
GoogleやYouTubeで検索する…
Instagramでハッシュタグから辿る…
Twitterのトレンドを追う…
いろいろ手段がありますよね。自分の使いやすい方法で情報を仕入れるのが良いと思います。もちろん書籍や学校の先生、友人と話すのも手段のひとつです。それらの手段に正解も不正解もありません。ただ、気を付けていただきたいことは「知る」という過程です。
例えばネットでの検索をするとき、みなさんは自分で検索ワードを決めていますよね。手軽に調べられるし、手に入る情報量も優れています。
難しいのは「自分が知りたいとおもったこと」しか調べられないことです。
ネットでたくさん調べて、数あるなかから選んだモノ。買ったときには完璧! と思っていたのに、使ってみたら欠陥をみつけてしまった。そんな経験はありませんか?
ネット検索は、あまりに膨大で、本当か嘘かわかりません。だからその中から「これは正しい」と選ぶ工程があります。
問題はこの「選ぶ」ということです。私たちは自分の選択が正しいものであると信じたい、他の選択肢は誤っていると思いたい傾向があります。これは心理学の用語で「確証バイアス」と呼ばれています。
調べるのはとても大切なことです。そしてネットには客観的な情報も、リアルな口コミもたくさんあります。気をつけてほしいのは、私たちは都合の良い情報を信じてしまうということです。
買い物くらいであれば、そこまで大事にならないかもしれません。むしろ前の記事で書いたように「知らない」ことに気づいて、その後は注意できるようになるかもしれませんが、人生の選択を迫られる学校選びや就職活動のときには注意してくださいね。
情報とはあなた以外の誰かがまとめたものにすぎません。誰かが大切だなと思ったことや残しておきたいと考えた物事しか、情報にはなりません。それに匂いや温度、場の空気のような体感するものは、今の技術では残せないのです。
人によって感じ取るものが異なるように、情報と同じ感想を自分が持つとは限りません。大切な選択は情報だけではなく、可能なら実体験も踏まえてみてくださいね。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 広報担当マネージャー
山﨑 梓
1990年生まれ。2010年から学生ボランティア団体で災害救援活動や地域貢献活動に参加。卒業後に育て上げネットに入職。ユースコーディネーターとして支援に関わりながら調査・研究を担当。現在は広報・寄付担当マネージャー。行政・自治体の若年無業者向けの支援に関わる技術審査員等歴任。共著に『若年無業者白書2014-2015』(バリューブックス)