そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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やりたいことが見つからない方へ
~あのとき予備校で言われたこと~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット
山崎 梓(やまざき・あずさ)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:

前回は就職活動をする高校生の3人に1人が「自分のやりたいことが見つからなくて不安」と回答したということに触れてきました。

就職活動に限らず、大学を目指す方にとっても、その学部選びに困っている方もおられるのかもしれないので、参考になればと大学について触れてみます。

「やりたいことがないなら社会学部が良いよ」

大学受験をしているとき、ある予備校の先生に言われたのです。その一言が頭に残っていて、私は社会学部のある大学を第1志望にしました。なんとも他人任せに人生を歩んでいる気がします。

そこまで強い意志がなく入った大学。そんなことでいいのかと自分でも思いますが、適当な理由で入った社会学部でも印象的なことがありました。

最初に受けた社会学の基礎を学ぶ講義で、教授が私たちにひとつ問題を出しました。

「“社会”をかいてみて」と。

この問題に明確な正解はありません。多分、良い答えも悪い答えもありません。

参加した学生の答えはさまざまでした。
・漢字で「社会」と書いた
・自分と家族、友人などの相関図
・白紙

私のような中途半端にかじっただけの人が評価するようなものではないですが、どれも答えとして間違っているとは思いません。

社会学の最初の講義で出された質問として、どの回答も、社会学を知るための切り口になっていたからです。詳しいことは、ぜひ大学に入ってみてから考えてみてください。

社会学の講義には「〇〇社会学」というものが多くて、社会を形作る構造や事象がテーマになっています。〇〇に入るものは教育や文化、家族、労働、福祉…と多彩です。取り扱う幅がかなり広いので、毎日、知らなかった社会に触れていくような感覚がありました。最近はそういう興味・関心が重要といわれることも増えましたが、社会のすみっこにある、いままで注目したことのない物事までテーマにできる柔軟さがあります。

私は大学に入ってから始めたボランティア活動や非営利活動をテーマにしていましたが、あるとき横に座っていた学生のテーマは「世界各国の鍋料理」でした。

当時は「なんでもありだな…」と驚きました。自分のテーマの平凡さがちょっと嫌になりました。

話を聞いてみると、鍋料理は椀の形状や具材、発祥の差異など、各国の文化風土が垣間見える興味深い研究だったことを覚えています。

さて、蛇足になってしまいましたが「自分のやりたいことが見つからない」となると、どうしても大学に行くこと自体にモチベーションが保てない状況もあると思います。

私の場合、社会学部が合っていたのだと思いますが、もっと深く勉強したいと思えたことは大学に入ってから見つかりましたし、そのとき学部自体の専門性が高いと制約も増えていきます。将来の選択を後回しにすることは必ずしも悪いことではありませんが、「やりたいこと」と出会えたときに、存分に取り組めるような選択をしておくこともおススメです。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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