若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
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モチベーションの捉え方
~味方してくれる大人を見つける~
山﨑 梓(やまざき・あずさ)
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中高生の方々の話を聞いていると、この10年あまりの日々でずいぶんと変わっていったと感じています。そもそも私のときにはスマートフォンがなかったし、SNSやLINEがこれだけ浸透するとは思いもしませんでした。
いろいろなお話を聞いていくと、学校とのやり取りのための専用のアプリがあったり、学習塾が講義内容を無料で公開していたり、驚くことばかりです。多様なサブスクのサービスに触れるたび、これが学生のときにあったら大変だったなと思います。
この情報の量と質が私の学生時代と最も違うことだと感じています。10年前のことなどすでに昔話ですが、私は当時、自分の将来の選択肢は大学にいって、会社に就職するくらいしか見えていませんでした。どういう会社で、どういう仕事をしたいかなんて考えたこともなかったです。
いまは知ろうと思えば大抵のことは調べることができます。その界隈に詳しい人がSNSを使っていれば、すぐにDMを出すこともできて、もしかしたら10秒後には返信があるかもしれません。慣れてしまったことですが当時では考えられないスピード感です。
もしかしたらみなさんは、私たちには想像もつかない方法で、私たちが知る機会すらなかった業界の仕事をみつけて、その道を志すかもしれません。そのとき、応援や導いてくれる大人と出会えれば良いのですが、知らないことは警戒してしまうのも普通の反応で、家族や先生からの反対も受けるかもしれません。
そういうとき、大切だなと思うのは、自分のやりたいこと、できるようになりたいことをできるだけたくさんの人に伝えてみることです。声をあげるのは、最初は恥ずかしくて、難しく感じるかもしれませんが、今はSNSで匿名のままスタートを切ることもできますし、バーチャルな人格を使うこともできます。
前回の記事から、大人になると自律が求められるようになって、大変なことが増えると書いてきましたが、一方で、師事する人を選べるようになるということでもあります。
自律していくこと、モチベーションを保ち続けることは、必ずしも自分だけで頑張ることではなく、周りの力を借りて達成していくものです。
どうしても自分で探すのは向いていないという方は、よかったら若者を支える団体に相談をしてみてください。私たちはもちろん、さまざまな人生の選択を支えたいと考えている人がいて、あなたのような人を待っているのです。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 広報担当マネージャー
山﨑 梓
1990年生まれ。2010年から学生ボランティア団体で災害救援活動や地域貢献活動に参加。卒業後に育て上げネットに入職。ユースコーディネーターとして支援に関わりながら調査・研究を担当。現在は広報・寄付担当マネージャー。行政・自治体の若年無業者向けの支援に関わる技術審査員等歴任。共著に『若年無業者白書2014-2015』(バリューブックス)