そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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「こども大綱」をザっと見て、
思うこと

認定特定非営利活動法人 育て上げネット
山﨑 梓(やまざき・あずさ)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:

昨年末にこども家庭庁から「こども大綱」が出され、閣議決定されました。大綱というのは政策の基本的な方針を定めたものです。63ページもあるので、これを読むには気力を求められます。

実はこの原稿を書いているのはまだ2023年の12月末で、私もまだザっと目を通した段階です。今回は具体的な内容には触れずに、気になったことをお伝えしようと思います。

まず、最初にこどもの対比を「おとな」と書いているのは特徴的ですね。あえて漢字表記を使わないことに意志を感じます。

文中にある、もうひとつの人格「若者」は漢字表記なのが気になるところでありますが、あえて「こども」「おとな」と文字表記をそろえているのは差を作らないためでしょうか。

表現の面では「若い世代」という言葉が多用されている点も気になります。検索をかけると資料中に24回もでてきます。「20代、30代を中心」という枕詞をつけて使われていますから、おそらくその年代を指すのだと思われます。

近いことばの「若者」は、国の定義では15~39歳を指していて文中には315回も出ています。この差はまだ見えませんが、行政書類ですからなんらかの使い分けをしていると思われます。今後の行政書類に注目しても良いかもしれません。ちなみに「青年期」という言葉も少しだけ出てきます。こちらは14回です。

もうひとつ気になるのは「権利」という言葉です。

大綱に書かれているほとんどで、こどもと若者が権利の主体であること、権利が保障される存在であることを強調しています。権利の主体である本人たちがそれを主張できるようになること、それを受け入れる社会(おとな)の体制作りについても頻出して書かれています。

アウトラインだけ読んでいくと、こどもの権利については国際的な条約もあるため、索引元がありますが、若者の権利についてはそうした原典となるようなものが無いのではないかという示唆が見えてきます。

これまで政府が進めてきた過去の大綱などはあるものの、若者が守られるべき存在であることが書かれたものは世界的に見ても少ないのでしょうか。従来の世論を鑑みても、自己責任的な立ち位置になりがちな若者という存在ですから、こうして権利の下にあることを宣言されるのはとても重要なことでしょう。

最後に担当大臣の加藤鮎子さんが出しているコメントの一部を引用します。

これからも、こども・若者や子育て当事者のみなさん一人ひとりの意見を聴いて、その声をまんなかに置いて、そして、こどもや若者のみなさんにとって最も善いことは何かを考えて、政策に反映し、大人が中心になってつくってきたこの社会を、「こどもまんなか社会」へとつくり変えていくために、みなさんとともに歩んでまいります。(こども家庭庁「こども大綱の推進」令和5年12月22日)

2022年6月のこども基本法の制定から1年以上をかけ、庁の取り組み基盤が整ってきたことを感じます。2024年もこども家庭庁から目が離せません。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか


認定特定非営利活動法人
育て上げネット 広報担当マネージャー
山﨑 梓
1990年生まれ。2010年から学生ボランティア団体で災害救援活動や地域貢献活動に参加。卒業後に育て上げネットに入職。ユースコーディネーターとして支援に関わりながら調査・研究を担当。現在は広報・寄付担当マネージャー。行政・自治体の若年無業者向けの支援に関わる技術審査員等歴任。共著に『若年無業者白書2014-2015』(バリューブックス)

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