そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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「どの支援が自分に合うかわからない」
という声に思うこと

認定特定非営利活動法人 育て上げネット
山﨑 梓(やまざき・あずさ)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:

先日、とあるところで私たちの取り組みについてお話する機会をいただきました。そのなかで好評だったのは「若者支援のプログラムがごちゃごちゃしている背景」についてです。

実はたびたび相談者から「結局、どれが自分に合うのかわからない」という声をいただきます。よく調べている方ほど、ホームページやチラシから自分に合うのかがよくわからなくなってしまった⋯というのは、私たちの努力不足であって、申し訳ない限りです。たしかに育て上げネットだけでも若者向けの支援プログラムが10種類を超えています。改めて説明しないと、その差がどこにあるのかというのはわかりにくいです。

『おいしい水』みたいなもので、生産地やブランドが違い、成分も硬水・軟水と種類があり、その濃淡があり⋯と、少しずつ違いはあるのですが、初見ではどれも『おいしい水』であります。調べてみて、場合によっては飲んでみて、初めて自分の体に合うのかどうかがやっとわかったという経験をされる方もいるのではないでしょうか。

国が若者を支えるための制度を整備して約20年経ちましたが、それ以前から組織的な活動をしていた方々の歴史を踏まえても半世紀ほどです。このあいだに私たちは新たな若者の悩みを見つけては、それにあった支援を構築して⋯という工程を続けています。

行政の支援はひきこもり、ニート状態に対するものが中心で始まり、次第に不登校や中退した学生年代への支援へ延伸するようになりました。すると「子どもの貧困」という言葉がトレンドになって、学校への通学ではなく経済状況という別のベクトルが生まれます。

さらに若年層の支援が充実すると、今度は就職氷河期世代の困難性が浮き彫りになって対象年齢の実質的な拡大が進みました。若者支援が見ている視野はいまや10代から40代までを包括する、あまり他では例のない領域に取り組んでいます。

これに加えてコロナ禍を経てオンラインでの相談を実装し、最近は孤独・孤立が社会課題化して、相談や講座のような特定の時間を予約して利用する形から、フリースペースのようなよりラフな利用を想定した居場所支援の開発が進んでいます。

若者支援の歴史は発見の連続です。これまで言葉のなかった状態に誰かが名前をつけ、そのための支援が開発され、課題感をもった方が参入してきて、支援の輪が広がってきた経緯があります。自分で「これだ!」と思えるようなプログラムがあれば、まずはそこから始めてほしいというのが願いではありますが、やはり『おいしい水』を調べ上げて、このメーカーのコレ!と決めるにはいろいろな体験も必要だと思います。

私がおすすめするのはオンラインのプログラムです。対面の講座や説明会だと途中退席ができなくて「これは微妙かも⋯」って思っても抜け出しづらいのですが、オンラインのものは簡単に抜けられますし、お試しに良いと思います。

アトオシ・オンラインというサポートプログラムはそれに加えて、利用登録なしでも利用できるプログラムも各種ありますので、最初のステップとして最適だと思います。「この人たちなら話しても良いな」と思えたら相談に申し込んでみてもらえればうれしいです。

アトオシ・オンライン

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか


認定特定非営利活動法人
育て上げネット 広報担当マネージャー
山﨑 梓
1990年生まれ。2010年から学生ボランティア団体で災害救援活動や地域貢献活動に参加。卒業後に育て上げネットに入職。ユースコーディネーターとして支援に関わりながら調査・研究を担当。現在は広報・寄付担当マネージャー。行政・自治体の若年無業者向けの支援に関わる技術審査員等歴任。共著に『若年無業者白書2014-2015』(バリューブックス)

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