そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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伝えたいことを届けるための
リニューアルの取り組み

認定特定非営利活動法人 育て上げネット
山﨑 梓(やまざき・あずさ)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:

10月に入っても相変わらず暑さが続いています。今月も気温30度を超える日があるということで、自転車通勤の私はまだまだ憂鬱が続きます。

さて、先日、私たちが提供しているプログラム「シル・ミル・テミル」のコンセプトを見直し、ホームページをリニューアルしました。

シル・ミル・テミル

リリースから1年ほど経ち、利用してくれた若者たちや実際にやってみてわかったことを整理して、コンテンツの価値や意味を改めて定義しています。

もともとこのプログラムは自己理解を進めることを目的としたものです。知る、見る、~してみる⋯⋯と、さまざまな体験を応援し、経験からなにを感じるのか、どんなことだったらできるのか。逆に、どういうことは望まないのかを理解し深めてもらいたい、という願いが起点にあります。

そんな心持ちを表現した最初のコピー「あなたがあなたのことを知る」は決して悪くないと考えていますが、少しこちらの要求が強い印象を受けます。プログラムを通じてできることを説明した表現でしたが、わかりやすいか? と自問自答すると物足りなさも感じていました。

実際に利用した若者がどんなことを感じたのか、そして私たちは何ができたのだろうかと振り返ると、若者の悩みは尽きないけれど、その悩みは「自分のことを知らない」なのか? という疑問が生まれてきました。

そのうち「渇き」というキーワードを見つけました。周りと比較して、なぜ自分だけできないでいるのか? という苦しさ。やりたいことがない、できると思えない、やったことがない、なにかしないといけないのに動けない⋯など、満たされていない感情が原点にありそうだと掘り下げが進んでいきます。

「できない、やったことがない」という気持ちに対して、本当に自分だけができないのか試してみることがこのプログラムの価値ではないかという考えに行きつきました。

その末に生まれたのが、新たなコピー「ココロの充電プログラム」です。「渇き」から活力の不足、貯蓄、充電⋯⋯と連想ゲームを巧みに進めたスタッフは素晴らしい感性で表現をしてくれたと思います。

“ココロの充電” が良いなと思っているのは、必ずしも具体的な結果を求めていないことです。もちろん事業としての観点でいえば就職、進学などの結果が要求される点はありますが、それは利用を始める段階の若者の欲求としては遠い世界です。

将来的にそんな未来へとつながっていればいいけれど、最初の入り口でそこまでの未来を描いている若者は多くありません。自分の気持ちを満たしてから初めてその先のことを考えられるようになるというのは、支援者の多くが共感するものだと思います。

最近はこういうキャッチコピーに力を入れたプログラムも増えてきました。時間をかけて説明したからといってわかってもらえるものでもありません。説明文をそれだけ読んでくれたら御の字ですが、自身の日々の生活を振り返れば、そこまで読み込むものは限られているでしょう。

「ココロの充電」「シル・ミル・テミル」のどちらもキャッチーな言葉をあえてつけています。それはエネルギー不足のときに「文章を読む」のはとても苦労することだからです。疲れているときほど、眼が滑って、文章としての読解ができない感覚になります。精神的に余裕がないときほど、長く書いてあっても読んでもらえないのではないか? とも思うのです。

だからこそ、読むのではなく直感で目に入る10文字ほどのわずかな言葉に気持ちを詰め込みます。伝えたい気持ちが前面に出るとチラシいっぱいに言葉を敷き詰めがちですが、その行動が相手にフレンドリーに映るかといわれるといささか悩ましいです。

今回のリニューアルがどのような結果につながるかまだわかりませんが、今の時点では上々の反応だそうです。良かったらホームページもご覧くださいましたらうれしいです。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか


認定特定非営利活動法人
育て上げネット 広報担当マネージャー
山﨑 梓
1990年生まれ。2010年から学生ボランティア団体で災害救援活動や地域貢献活動に参加。卒業後に育て上げネットに入職。ユースコーディネーターとして支援に関わりながら調査・研究を担当。現在は広報・寄付担当マネージャー。行政・自治体の若年無業者向けの支援に関わる技術審査員等歴任。共著に『若年無業者白書2014-2015』(バリューブックス)

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