そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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「つながりがあれば
なんとかなる」の話

認定特定非営利活動法人 育て上げネット
山﨑 梓(やまざき・あずさ)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:

先日、杉並区高円寺にある書店・蟹ブックスにて、夜の書店のお話会というイベントを開きました。もともと、古本の買取を行うバリューブックスが実施した「ブックプレゼント」という企画があり、子ども・若者への書籍をプレゼントしていただいたのですが、その選書に協力してくださったのが蟹ブックスでした。

選書とともに、若者向けに講話会を図々しくお願いしたところご快諾くださいました。こちらのお店には『ニートの歩き方』(技術評論社)や最近も話題になった『パーティーが終わって、中年が始まる』(幻冬舎)を書かれたphaさんも働いておられ、おふたりからのお時間をいただくことができました。

店長の花田さんからは日常にある生きづらさとの向き合い方、phaさんからは働くことの考えについてお話をおうかがいできました。

おふたりが口をそろえておっしゃっていたのは「つながり」でした。居場所があればやっていけるという言い方もされていました。

また、おふたりとも日々の生活のなかに生きづらさを持ちながら、それをあまり悲観していないのが印象的でした。40代を迎えて考え方が変化してきたという話もされていて、若いときは自己評価も低かったそうですから、時間をかけて受容が進むということもあるのでしょうか。

総合的にいろんなことができる人材が是とされている世の中で、日常生活のなかに強烈に苦手なことがあると、それが生きづらさとして表出するというお話もあり、納得感も強かったです。

力のある支援者のお話でも同じ言葉を聞きます。生きづらさは社会システムと噛み合わないために起きる環境の問題であり、そこから孤立や孤独が起きていると私は理解しています。つらい状況であっても、頼れたり、任せたりするつながりがあれば、乗り越えられる可能性が高まって「どうにかなる」のだと思うのです。

phaさんはとても意識的につながりを作られているように思いました。精力的にそうした行動をとれることが、孤立回避に有効であることを体現されているようにも見えます。

同日、夜のユースセンターというプログラムが行われていました。まさに若者のための居場所を作る活動です。いままでの取り組みでは働いていない方や学校に通っていない方が主な対象でしたが、この活動にはそういう制約はなく、例外はあれ、どなたでも利用できます。

週1回、3時間ほどの開催ですが、彼らは毎週のように顔を出してくれます。何かあったときに話に来るのではなく、何もないときに遊びに来てくれる。この関係こそが求められる「つながり」なのではないかと考えています。

「つながり」に助けられた少しだけ人生の先をいく方のいう「つながりがあればどうにかなる」の説得力は、事業(支援)という形で実現することの意味と価値を感じられる時間となりました。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか


認定特定非営利活動法人
育て上げネット 広報担当マネージャー
山﨑 梓
1990年生まれ。2010年から学生ボランティア団体で災害救援活動や地域貢献活動に参加。卒業後に育て上げネットに入職。ユースコーディネーターとして支援に関わりながら調査・研究を担当。現在は広報・寄付担当マネージャー。行政・自治体の若年無業者向けの支援に関わる技術審査員等歴任。共著に『若年無業者白書2014-2015』(バリューブックス)

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