そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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孤独・孤立社会と
AI技術を照らし合わせ思うこと

認定特定非営利活動法人 育て上げネット
山﨑 梓(やまざき・あずさ)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:

私が調べているせいもあるのですが、SNSの画面半分くらいがAIに関するポストで埋まっています。あとはプロレスと阪神タイガースのことです。

AIは個人では到底追いつけない速度で進化を続けています。もう私は周回遅れで、細心のアップデートにはわかったようなわかっていないようなリアクションをしながら、法人のスタッフへ偉そうに「すごい! 進化!」とニュース記事を共有しています。

大きな進化のひとつは、高い精度で会話ができるようになったことでしょう。日本語はまだカタコトな雰囲気も感じさせますが、それでも今までに比べたらだいぶ良くなってきました。レスポンスもその内容も柔軟ですし、人間にはできないようなこともこなせています。

わからないながらに触れていて思うのは、日常会話では使わない言葉を呪文を唱えるように差し込んだり、対人でのコミュニケーションでは使わないような言葉選びをしなければ、期待する結果へ導けないのは相変わらずな部分はありますが、それでもだいぶ、こちらの気持ちを汲み取るようになったことです。

いちばん重宝しているのはプログラミングです。必ずしも常に使うスキルではなかったのですが、一定のレベルまでは自分で書かなくてよくなりましたし、その完成度もだいぶ高いので、プロフェッショナルなものを求めないのであればこの程度で充分です。

AIの良いところは、何度同じことを質問しても、イライラして当たりの強い言葉を使っても、顔色ひとつ変えずに返事をし続けてくれることだと思います。

多くの人が孤独や孤立を感じて生活している昨今、そのひとつの問題は、つながりを作るためには「誰か」が必要だということでしょう。自分だけの都合ではどうにもならない「誰か」をAIが満たしてくれるなら、孤独・孤立社会においてはこの上ない革新ではないでしょうか。

そうなってくると支援者という立場の危うさを感じざるを得ません。生身を持っていることがアドバンテージになるのかどうか。また、自分の都合には100%合わせてくれない生身の「誰か」という存在が、AIへの期待値を超えられるのでしょうか。今はまだ、人と関わるほうがAIのそれよりも高い位置にあるのでしょうけれど、逆転される日もそう遠くないかもしれません。

AIがドラえもんのように、便利なアウトプットを提示しながらも、どこか人間くさく、愛らしい容姿や人格を手に入れていくとしたら、私たちは太刀打ちできるのでしょうか。いまの時点のAIの弱点は、極めて受け身であることでしょう。私たちから問うことなくして、回答がありません。起点を自らが作らなければいけません。おせっかいはしてこないというのが彼らの良いところでもあり、今の限界でもあります。

2000年生まれが社会人になり、社会人として活躍するようになってきました。いま、さまざまな企業から「若者との接し方がわからない」という声が届くようになっていますが、AIネイティブの世代がこれから生まれてくるのだとすると、どうなっていってしまうのでしょうか。

孤独・孤立の問題が大きくなる現代社会において、AIが大きな役割を果たすようになるのは確実な未来なように感じています。支援者という立場に限らず、非AIネイティブの私たちとの根本的な差がもたらす影響は非常に大きくなるように感じています。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか


認定特定非営利活動法人
育て上げネット 広報担当マネージャー
山﨑 梓
1990年生まれ。2010年から学生ボランティア団体で災害救援活動や地域貢献活動に参加。卒業後に育て上げネットに入職。ユースコーディネーターとして支援に関わりながら調査・研究を担当。現在は広報・寄付担当マネージャー。行政・自治体の若年無業者向けの支援に関わる技術審査員等歴任。共著に『若年無業者白書2014-2015』(バリューブックス)

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