そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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生成系AIと支援の
共通点や共生を考える

認定特定非営利活動法人 育て上げネット
山﨑 梓(やまざき・あずさ)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:

3月の本コラムでChatGPTに触れてみる記事を書きました。当時の私の不安は「これは仕事が奪われるぞ」という危機感であり、私程度の考えることはAIが取って代われるものだという自信の喪失でした。

それから時間が経ち、社会には「生成系AI」という言葉が広まるようになりました。ChatGPTはチャット形式で返答を生成します。このほかにも画像や動画といったクリエイティブ領域でも、AIが生成する技術は目覚ましい進化を遂げています。

私の現在は「あえてChatGPTに聞く」という段階にいます。“あえて”としているのは、まだ好奇の目を向けているからです。「こんなこと聞いたらどんな返事をするんだろう」とワクワクしながら、そして半信半疑でチャットを送っています。

情報の信ぴょう性は担保されておりませんし、個人にカスタマイズした回答ではないですから、要するに、そこまで期待していないのです。

プログラミングなど開発業務では組み込まないと業務効率に影響する場面も出てきているようですが、多くの方にとって生成系AIは遊び相手にすぎず、重大な選択を迫られたとき「ChatGPTがそう回答した」と根拠にしたいとは思わないでしょう。

しかし、支援者としては「遊び相手」は魅力的な立ち位置です。なにより相談がされやすいですから。

ほとんどの支援機関は「申請主義」で成り立っています。本人から利用したいと申し出があるまで、こちらからできることはほとんどありません。生成系AIも似たようなところがあります。これらも、私からの問いや要求がない限り何かをすることはありません。必ずコミュニケーションの端を発するのは私たちからです。

私は悩み相談の「1人目」は変わっていくだろうと考えています。支援機関と生成系AIのどちらが声をかけやすいかと問われれば、AIに軍配が上がるのは今までのテクノロジーの進化からも自明だからです。

たとえば体調を崩したとき、自分の症状でネット検索していませんか。医者は開所時間も決まっていて、病院に行かなければならないけど、ネット検索は目の前にあるスマホですぐできるのですから。

内閣府が最近行った調査では、(家族や知り合い以外の)相談相手に求めることの上位には「匿名であること」、「曜日・時間を気にしなくていいこと」が挙がっています。

▼相談先に求めること(15歳~39歳)

横スクロールしてご覧ください

▲「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」(内閣府)より

同じ調査では、支援機関の利用意向についても調査をされています。10代の62.3%が「利用したいと思わない」と回答していることを踏まえると、気軽に話しかけられるChatGPTが「1人目」であって、私たち支援者は「2人目」になる将来は近そうです。いや、そう考えていくと、現時点でも私たちは「2人目」の存在であります。すでにネット検索も書籍も世に溢れているわけですから。意外と忘れがちですね。

手軽でそれらしい情報を返してくるAIの存在は、きっとこれから社会に溶け込んでいくでしょう。若者も受け入れそうです。近い将来、私たち支援者のところには「ChatGPTに聞いたらこう言われたから」という相談が増えるかもしれません。

今日書いたこの考えも、1カ月後にはさっぱり違う方向に行っているかもしれません。それくらい変化が目まぐるしいです。食らいついていくのは骨が折れますが、それでも「あえて」使い続けます。自分自身の変化にも、やはり好奇心が尽きません。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか


認定特定非営利活動法人
育て上げネット 広報担当マネージャー
山﨑 梓
1990年生まれ。2010年から学生ボランティア団体で災害救援活動や地域貢献活動に参加。卒業後に育て上げネットに入職。ユースコーディネーターとして支援に関わりながら調査・研究を担当。現在は広報・寄付担当マネージャー。行政・自治体の若年無業者向けの支援に関わる技術審査員等歴任。共著に『若年無業者白書2014-2015』(バリューブックス)

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