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第22回 Part.1

第22回 アクティブラーニング支援技術を研究(1)
Part.1
協調学習をコンピュータで支援する

上智大学 理工学部
情報理工学科 田村 恭久教授
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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ここ数年、学校教育のなかで「アクティブラーニング」が大きなキーワードの1つになっている。アクティブラーニングは、大学教育改革の流れのなかで注目されるようになり、各大学においてさまざまな取り組みが始まっている。また、中学校や高等学校で導入するケースもあり、もともと「調べ学習」などアクティブラーニング的な要素のある小学校にも波及しようとしている。学問の世界でも、アクティブラーニングの方法論はもちろん、アクティブラーニングをコンピュータで支援する研究などが始まっている。そこで今回は、上智大学理工学部情報工学科の田村恭久先生の研究室を訪ね、アクティブラーニング支援技術の研究について話を伺うことにした。(Part.1/全4回)

教育方法を幅広く研究する
教育工学

▲田村 恭久教授

田村先生の専門は教育工学だが、まず教育工学とはどのような学問なのか、そこから教えていただくことにしよう。

「小学校の教員免許でも、中学高校のどの教科の教員免許でも、取得するために必ず履修しなければいけない共通の分野として『教育方法』と呼ばれるものがあります。

生徒が授業を理解しているかをどのように把握するか、わかりにくいときにどういうヒントを出したり言葉かけをするとわかりやすくなるか、つまづいたときにどう支援するかといったことを学ぶ分野ですが、教育工学がカバーしているのはこの分野とほぼイコールです。

私の研究室では、コンピュータやネットワークを使って生徒の学びをどう支援するかというところに特化した研究をしていますが、教育工学そのものはコンピュータを使うかどうかにかかわらず、教育方法を研究する幅の広い学問だと言えるでしょう」

コンピュータを家庭教師のような存在に

田村先生の研究室では、アクティブラーニング支援技術の研究が柱の1つになっているが、それ以外にも電子教科書の研究など教育にコンピュータを活用する技術を追求しているそうだ。では、コンピュータの活用によってどのような教育を実現しようとしているのだろうか。

「わかりやすい例をあげると家庭教師ですね。家庭教師は、40人の学級で先生が教えるという状況と違って、1対1で教えます。生徒が質問したら、すぐに答えられる状況は、集合型の授業よりも密度が濃く、生徒1人ひとりに適応した学びを可能にします。

私の研究で考えている究極の姿というか理想的な姿は、コンピュータが生徒1人ひとりの家庭教師になれるような環境をつくりたいということなのです。

これは、言うのは簡単ですが、実現するのは簡単なことではありません。では、それを実現していくために必要なシステムは何かと考えたとき、その1つに生徒と対話できる技術をコンピュータに埋め込むことがあります。すでに自然言語処理(人間の言葉をコンピュータで処理すること。後述)という技術があるので、これをベースにして、コンピュータで生徒を支援する研究にトライしているのです」

グループディスカッションなど
協調学習に着目

アクティブラーニングにはさまざまなものがあるが、田村先生は協調学習支援を中心に研究を進めている。アクティブラーニングのなかで、なぜ協調学習に着目し、どのように支援することを考えているのか伺ってみた。

「私は10年以上前、アクティブラーニングがいまのように注目されていない頃から協調学習の有効性に着目して、コンピュータで支援できないか研究を進めてきたのです。

たとえば、協調学習を行うために40人学級で4人ずつのグループをつくると10グループできます。それぞれのグループごとにディスカッションをする場合、先生の役割としては、各グループを回って、誰も喋らなくなっていたら何か言葉かけをして議論を活性化したり、話題が脱線していたら元に戻すように修正してあげることなどがあります。でも、10グループを見て回るのは大変なことです。

これが大学になると、たとえば私の授業では140人ぐらい学生がいますから、30~40のグループを見て回ることは現実的にはできません。

だとしたら、各々のグループの議論をコンピュータでモニターして、発言が止まっているという状況を把握し、介入する必要がありますよというシグナルを出すだけでも先生の手助けになります。さらに、もう一歩進んで、話題が脱線したグループがあれば、元の話題に戻りましょうということまでコンピュータで介入することができれば理想的な協調学習が可能になります。そういう支援ができる技術を確立していきたいと考えているのです」

《つづく》

●第2回は『自然言語処理の技術を使って発言内容を解析・分類する方法』についてです。

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