大学、専門学校や企業などの研究室を訪問し、研究テーマや実験の様子をレポート
第29回 Part.2第29回 コミュニティカフェ・プロジェクト
~イチから企画を考え、実践で学ぶ~(2)
Part.2
生産者と消費者を想いでつなぐための
エシカル消費啓発活動
滝澤 淳浩 准教授
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千葉商科大学 サービス創造学部では「学問から学ぶ」「企業から学ぶ」「活動から学ぶ」を3つの柱に学ぶ。その学びのひとつである「プロジェクト実践」は、単位認定される正課授業の一環として、公式サポーター企業等のサポートを受けながら、学生自身が新しいサービスを企画・実行するプロジェクト活動だ。「コミュニティカフェ・プロジェクト」は、コーポレートコミュニケーション、インベスターコミュニケーションが専門の滝澤 准教授が担当する人気プロジェクトのひとつ。遠方からもカフェ運営を通じたコミュニケーションやSDGsに興味のある生徒が入学してくる。注目を浴びるコミュニティカフェ・プロジェクトで、学生は何を学ぶのだろうか。担当教員の滝澤 准教授、プロジェクトメンバーの学生、そしてサービス創造学部 今井学部長にお話を伺った。(Part.2/全4回)
Part.1 地域の人たちとSDGs12「つくる責任 つかう責任」を考えるコミュニティカフェ はこちら
フード・ドリンク担当の木幡さんが、「取り扱う商品はフェアトレードやJAS認証など、エシカル消費の観点で選定し、提供するコーヒーは協力企業に淹れ方を事前研修で指導を受け、サービスの品質を高めた」と教えてくれた。
本プロジェクトではSDGs12番目の目標「つくる責任 つかう責任(エシカル消費)」に着眼し、地域の方々に向けた啓発活動を行う。本プロジェクトでは初となる学外でのカフェ出店を通じて、より多くの地域の方々との交流の機会を持ち、地域住民がSDGsを推進していくための一歩となることをめざす。
コミュニティカフェの運営に必要な会計、広報、企画
様々な部門から多面的にプロジェクト運営を考える
広報担当は取材対応やプロジェクトに関わる人々との関係性構築など、企業の広報を担当した滝澤 准教授から直接指導を受ける。
副代表と企画広報部長を兼任する小泉さんは、高校生の時に訪れたオープンキャンパスでコミュニティカフェ・プロジェクトを見学し、プロジェクト活動がしたくて入学した一人。千葉商科大に通う兄からもプロジェクト活動の魅力を聞いており、千葉商科大は気になる学校だったそうだ。
企画広報部はオンライン広報チーム4名と企画チーム3名からなり、各チームのリーダーが実務を取り仕切り、さらに小泉さんが企画広報部長として両チームを指揮し、企業の担当者との窓口をつとめる。
「大変だったのは、学外でカフェをオープンするための外部の方との交渉や、対面とオンラインの学生が一緒に講義を受けるハイブリット講義での、学生同士のコミュニケーションの難しさだった」と話す。
「今回、プロジェクトとして初めて学外でカフェをオープンするにあたり、SNSの運用に力を注ぎ大きくフォロワーを伸ばすことができ、プロジェクト活動をしてみたいと考える高校生をはじめ、多くの人にプロジェクトを知ってもらい、つながりを深めることができた」と、笑顔をみせる。
これからのビジネスに必要な視点
コニュニティカフェとSDGs
単なる学園祭の模擬店のようなものではなく、大学の授業だからこそ多くの学びを得ることができるのが「プロジェクト実践」の魅力だ。
滝澤 准教授はSDGsを推進する大学の学長プロジェクトの1つであるエシカル消費の教育と啓発の研究チームに入り、自らの学びを深め、学生教育を行っている。コミュニティカフェ・プロジェクトも、SDGsに貢献するためにどうすればいいか考えて学生たちと企画にあたった。これから新しいサービスを考える上で、SDGsは絶対に欠かせない視点だと、滝澤先生は話す。
企業活動におけるCSR(企業の社会的責任)は重要なことだ。これからはより「持続可能な社会」が企業にとっても重要なテーマとなる。未来を担う学生たちには、サービスを提供する側かつ消費者として、また次の新しい世代へよりよい社会をつないでいく当事者として、意識を高くもった人間となってほしいと期待する。
千葉商科大学では大学全体でSDGsの推進を進める。「自然エネルギー100%大学」をはじめとした取り組みをきっかけに、学生のSDGsへの理解と意識は高い。
「入学前までは、SDGsについてよく知らず身近にあっても気づくことがなかったが、コミュニティカフェ・プロジェクトでの学びや自然エネルギー100%大学など大学全体で行われるSDGsへの取り組みをとおして、意識が大きく変わったことを実感する。特にフェアトレード商品への意識が強くなり、同じチョコレートでもフェアトレード商品があればそちらを選ぶようになった」と企画担当の増田さんは話す。
コミュニティカフェをとおして
「エシカル」を誰にどのように伝えるか
代表を務める丹羽さんは、2年生の4月からコミュニティカフェ・プロジェクトに参加し2年目となる。今回のテーマとなる「エシカル消費」はここ数年の重要なテーマになっているという。「今までは学内での開催だったが、今回は初の学外での開催なのでより多くの人へ、エシカル消費についてのメッセージを伝えることができるだろう」と話す。
「エシカル」とは「倫理的な」「道徳的な」という意味だ。私たちの良心と結びついた人や社会、環境への配慮だと言い換えられるだろう。SDGs12「つくる責任 つかう責任」を考える上で、「エシカル」は重要なキーワードだ。
授業で教材とした『はじめてのエシカル 人、自然、未来にやさしい暮らしかた』(著:一般社団法人エシカル協会代表理事 末吉里花/山川出版社)を読み、今着ている洋服がどこから来たのか、誰がどのように作っているのか。毎朝食べるバナナやコーヒー、チョコレートは? 価格の安さなどに隠れた、耳を疑う様な事実があること。知ることが未来を変えるパワーとなることを学ぶことができ、視野がとても広がったと、教えてくれた。
そこで今回のコミュニティカフェ・プロジェクトで、エシカルな行動を促進するためには、まず「エシカル消費」を知ってもらうことが必要だと考えた。
メイン企画は子供を主なターゲットとした「サンタと学ぶエシカル教育」を企画した。持続可能な社会のためには、次の世代の子どもたちにエシカル消費などSDGsの意識づけをすることが重要だと考えたからだ。内容が難しくなりすぎないよう、エシカル消費を楽しく動画で学べるスライドを作り、わかりやすく伝えられたと話す。
「日本では他国に比べ、エシカルという言葉の認知度が低い。今回のコミュニティカフェ・プロジェクトをとおしてエシカル消費という言葉を知ってもらい、毎日の生活で自分の選択・行動を考えるきっかけに自分のできることから行動に移してもらえると嬉しい。そしてエシカル消費が当たり前な世界になってほしい」と話す。訪れた人たちに声を掛けたり、ドリンクやフードを楽しみながら店内の掲示物に目を走らせるゲストを見守っていた。
コミュニティカフェ・プロジェクトへの興味から入学した丹羽さん。食べることが好きで高校時代には様々な店舗をめぐり、商品の工夫や店のレイアウトなど、カフェ運営の魅力に引き込まれていったという。
「サービス創造学部のコミュニティカフェ・プロジェクトなら、座学で学んだことを実際のカフェ運営に活かせる、それが学生のうちからできること、自分で企画したことをゼロから実践できることが大きな魅力。コミュニティカフェ・プロジェクトで学んだ考え方、リーダーとして後輩をサポートしプロジェクト全体を成功に導くことは、将来自分が仕事をする上で財産になるので最後までしっかりと学び切りたい。将来は大学で学んだ知識を生かし、食に関わった仕事を通じて、エシカル消費など社会をよりよくするためのメッセージを伝えていきたい」と話す。
《つづく》