研究室はオモシロイ

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第29回 Part.3

第29回 コミュニティカフェ・プロジェクト
~イチから企画を考え、実践で学ぶ~(3)
Part.3
地域の方々に「幸せを生むバナナと
不幸を生むバナナ」があることを伝える

千葉商科大学 サービス創造学部
滝澤 淳浩 准教授
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
公開:

千葉商科大学 サービス創造学部では「学問から学ぶ」「企業から学ぶ」「活動から学ぶ」を3つの柱に学ぶ。その学びのひとつである「プロジェクト実践」は、単位認定される正課授業の一環として、公式サポーター企業等のサポートを受けながら、学生自身が新しいサービスを企画・実行するプロジェクト活動だ。「コミュニティカフェ・プロジェクト」は、コーポレートコミュニケーション、インベスターコミュニケーションが専門の滝澤 准教授が担当する人気プロジェクトのひとつ。遠方からもカフェ運営を通じたコミュニケーションやSDGsに興味のある生徒が入学してくる。注目を浴びるコミュニティカフェ・プロジェクトで、学生は何を学ぶのだろうか。担当教員の滝澤 准教授、プロジェクトメンバーの学生、そしてサービス創造学部 今井学部長にお話を伺った。(Part.3/全4回)

Part.1 地域の人たちとSDGs12「つくる責任 つかう責任」を考えるコミュニティカフェ はこちら

Part.2 生産者と消費者を想いでつなぐためのエシカル消費啓発活動 はこちら

▲滝澤 淳浩 准教授

コミュニティカフェの店内には、学生が作ったSDGsの概要、エシカル消費について解説するパネルや特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパンのポスターが掲示されている。

コミュニティカフェは駅ビルのフードフロアの一角にあり、子どもから年配者まで幅広い世代が通りかかり、学生の話に耳を傾けたり、一休みしながら壁にかかる展示を眺めたりしていた。来場者からはフェアトレード(※1)について語り合う声が聞こえてくる。

フェアトレード組織は、「経済的弱者である生産者に機会を与える」をはじめとした10の原則を定め、日々の活動を行っている。原則には、「公正価格」「こどもの労働、強制労働のない社会」「適切な労働環境の確保」そして「環境の配慮」などがある。( 世界フェアトレード機関/フェアトレードにおける10原則より)


※1:フェアトレードとは直訳すると「公平・公正な貿易」。つまり、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」。(フェアトレードジャパンHPより)

鮮度や味が同じなら、価格の安い方を選びたいのが多くの消費者の本音だろう。

しかし、その価格を実現するために生産者が犠牲となっているとしたら、どう考えるだろうか。

世界各地の農園では、バナナを大量生産するために大量の農薬の使用を余儀なくされた農家が、次々と健康を害している事実や様々な要因が関係している事実を知ってもらうことが、エシカル消費の最初の一歩だ。

他にも、コーヒーやチョコレートの原料となるカカオの生産や洋服に使われる綿の栽培などで同様の問題を抱えている。まず、この事実を知ってもらうことが重要だと学生たちは考えた。

動画やワークショップを通じて
エシカル消費を身近に感じてもらう

エシカル消費について、深刻で難しい問題として伝えると敬遠されるかもしれないので、多くの人が自分のこととして考えてもらえるような工夫が必要だった。

そこで、同じ世代の学生をはじめ、さまざまな方へ向けて、エシカル消費やフェアトレードを広めるため、身近にあるフェアトレード商品を紹介したり、エコバッグやマイボトルの利用を提案したりすることで、多くの人に行動を起こすきっかけにしてもらうことをゴールに設定した。

また、SDGs推進のため、より若い世代への訴求が重要と考え、小学校低学年や園児などをターゲットにした「サンタに学ぼう!エシカル教室」企画を考えた。

サンタの衣裳やバナナの着ぐるみを着たスタッフと一緒に、動画でエシカル消費について学び、オリジナルのクリスマスカードを作るワークショップだ。

使用する映像素材は、子ども向けにわかりやすい内容の構成を考え、途中でクイズを交えて理解を確認し、子どもたちとコミュニケーションを取りながら楽しくエシカルを学んでいく。

クリスマスカード作りには、協力企業である株式会社山櫻から提供された、通常廃棄されるバナナの茎からできたバナナペーパーを使い、「エコバックを使うぞ!」などエシカル宣言を書く。参加者には具体的な行動を決めることによる意識付けと、カードを持って帰って家族と共有し、考えるきっかけづくりにつなげるのも狙いの一つだ。

ワークショップのプレゼンターを務める企画担当の加藤さんは、プロジェクト活動に魅力を感じて、サービス創造学部へ入学した一人だ。

座学で学んだことを、実際にイチから考えて実践するプロジェクト活動は、「実践に重きがおかれユニークな学部で楽しそうだと感じた」と話す。

「実際に活動して、コンセプトやコンセプトを基にした企画内容を自分たちですべてイチから考えることのやりがいは大きい。

チームごとに担当する業務は異なり、それぞれが直面する課題も様々で大変さもあるが、実際に店頭でSDGs啓発のチラシを配ってみて、フェアトレードという言葉は知っていても意味を知らない方が予想より多く、今回の学外コミュニティカフェでSDGsを啓発することの意義とやりがいも感じた。

お客様からの『美味しかったよ』『家族にもエシカル消費について伝えるね』など感想の声を聞くことができ、本プロジェクトを通して地域の方々のフェアトレード商品やSDGsへの理解が深まり、エシカル消費について伝えられたことは大きな収穫になった」と達成感と自身の成長を感じたと教えてくれた。

今回のプロジェクト活動を通して、さまざまな人とコミュニケーションを図ることの楽しさを感じたこと、将来は志望している小売や流通業界で、この経験を活かして活躍したいと、今後の目標を教えてくれた。

今回、初の学外での出店を実施したように、コミュティカフェ・プロジェクトでは常に新しい取り組みにチャレンジしている。次の企画が楽しみだ。

《つづく》

●次回は、Part.4 「学問から学ぶ」「企業から学ぶ」「活動から学ぶ」サービス創造学部です。

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