研究室はオモシロイ

大学、専門学校や企業などの研究室を訪問し、研究テーマや実験の様子をレポート

第29回 Part.1

第29回 コミュニティカフェ・プロジェクト
~イチから企画を考え、実践で学ぶ~(1)
Part.1
地域の人たちと
SDGs12「つくる責任 つかう責任」を
考えるコミュニティカフェ

千葉商科大学 サービス創造学部
滝澤 淳浩 准教授
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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千葉商科大学 サービス創造学部では「学問から学ぶ」「企業から学ぶ」「活動から学ぶ」を3つの柱に学ぶ。その学びのひとつである「プロジェクト実践」は、単位認定される正課授業の一環として、公式サポーター企業等のサポートを受けながら、学生自身が新しいサービスを企画・実行するプロジェクト活動だ。「コミュニティカフェ・プロジェクト」は、コーポレートコミュニケーション、インベスターコミュニケーションが専門の滝澤 准教授が担当する人気プロジェクトのひとつ。遠方からもカフェ運営を通じたコミュニケーションやSDGsに興味のある生徒が入学してくる。注目を浴びるコミュニティカフェ・プロジェクトで、学生は何を学ぶのだろうか。担当教員の滝澤 准教授、プロジェクトメンバーの学生、そしてサービス創造学部 今井学部長にお話を伺った。(Part.1/全4回)

▲滝澤 淳浩 准教授

2020年12月、千葉県市川市の駅ビル:シャポー内のフードマーケットで、コミュニティカフェ「リーエンダ」が期間限定オープンした。

持続可能な開発目標・SDGs(※1)の目標12「つくる責任 つかう責任」をテーマに、カフェの運営をとおして地域の方へ「エシカル消費(※2)」の啓発を行った。

フェアトレード(※3)認証を受けたコーヒーをはじめ、工夫を凝らしたドリンクやフード、店内にはSDGsやエシカル消費に関する展示がされ、SDGs先進国の北欧にちなんだフードメニューや店内の内装を楽しむことができた。

また、エシカル消費を広く知ってもらうために、メインターゲットを小学生に設定した「サンタと学ぼう!エシカル教室」イベントを企画。参加した親子や若者に、楽しくエシカル消費を知ってもらい、実際の生活で行動してもらうきっかけづくりを行った。


※1:持続可能な開発目標(SDGs)とは、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり、日本としても積極的に取り組んでいます。(外務省HP「SDGsとは」より)

※2:エシカル消費とは、地域の活性化や雇用なども含む、人や社会、環境に配慮した消費行動のこと。消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと。倫理的消費とも呼ばれる。(消費者庁HP「エシカル消費普及・啓発活動」より)

※3:フェアトレードとは直訳すると「公平・公正な貿易」。つまり、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」。(フェアトレードジャパンHPより)

サービス創造学部
企業の実践知が息づく学生教育

コミュニティカフェ・プロジェクトとは、学生・教職員・地域の方々などのコミュニケーションの場を提供することを目的に、授業として学生がカフェの企画運営を行う。

担当教員の滝澤 准教授は当プロジェクトを担当して4年目を迎える。一般企業での営業・広報の経歴を持つ実務家教員であり、その経験値をもとにプロジェクトをより魅力的なものに磨きあげてきた。就任後、2年間は千葉ジェッツに関わるスポーツ系のプロジェクトを担当。3年目から、コミュニティカフェ・プロジェクトの担当教員として学生の指導にあたる。

千葉商科大学は商経学部を看板学部とした社会科学系の総合大学である。2009年4月に誕生したサービス創造学部は、民間企業出身者などの特命教授や公式サポーター企業など、企業との関わりの深い学部で、公式サポーター企業60社(2020年3月時点)と、実業界トップの特命教授による講義で高い就職率を誇る。

元々、滝澤 准教授は公式サポーター企業である加賀電子株式会社の広報担当として、千葉商科大学と関わってきた。加賀電子株式会社はサービス創造学部新設時から関わりの深い企業で、公式サポーター企業との橋渡しなども行ってきた。代表取締役会長である塚本勲氏が、学部新設から特命教授として教壇に立ち、広報担当として塚本氏と共に大学に足を運び、公式サポーター企業として出前授業を担当した経験を持つ。

企業の第一線で現場を踏み、学生を支援する公式サポーター企業の担当として学生に向き合ってきた経験があるからこそ、学生への理解も深く教育者としての学生への要求も高いのだと自身を評する。

学園祭の模擬店と一線を画す
人気のコミュニティカフェ運営

サービス創造学部は、「学問」「企業」「活動」の3つからの学びを柱とした学生教育に特長がある。教室の講義で受けた経営学などの学問を、豊富な実務家教員の下で実践して学び、卒業後に即戦力で活躍できる人材の育成をめざす。

プロジェクト活動は、学生自身が実践して学ぶ場だ。学問から学んだ知識や理論、公式サポーター企業や特命教授の講義で知ったリアルなビジネスの事例、またゼミで研究したマーケティングについてなどを総動員して、考えていく。課題にぶつかれば、それぞれの知見に戻ったり、先生やメンバーとのコミュニケーションを重ねたり、試行錯誤を繰り返す。そこで培われる能力が、社会に出て使える実戦力として応用されるのだ。

数あるプロジェクトの中で、コミュニティカフェ・プロジェクトは人気の一つ。実際に大学の授業でカフェの運営が体験できる。

元々は、学内のコミュニケーションの活性化を目的に「コミュニティカフェ」として誕生。プロジェクトは半学期ごとに1回ずつ行われ、2020年に初の学外出店となった。

自分たちでコンセプトを考え、自分たちで運営できることから、「カフェの運営を通じたコミュニケーションに興味があり千葉商科大学に入学した」というプロジェクトのメンバーは多い。既存の経済・企業の仕組みを学ぶだけでなく、これからの新しいサービスを考える上で必要なSDGsの推進についても授業には盛り込まれる。

イチから考える楽しさ
はじめてにチャレンジして成長する

プロジェクトの基本となるのは5つのステップ。①目標設定、②調査・企画、③プレゼンテーション、④活動実践、⑤総括・検証。このステップを繰り返し、仕事のスキルや社会人としてのマナーを身につける。コミュニティカフェ・プロジェクトの定員は最大25名。取材時は、3年生が4名、2年生が21名参加していた。

プロジェクトでは、まず代表や副代表などの人事を決め、店のコンセプト・目標を設定する。それらを実践するための企画を決め、授業での講義で、学びながら実際の運営のために担当グループ等の組織を組み立てていく。企画部がスケジュールを管理し、業務文書を作成して業務を明文化、細分化。一般的な企業の組織や業務フローを学び実践する。実践後に結果の振り返りを行う。

「実際にやってみることでの気づきは大きいので、より多くのことに気づいてほしい」と滝澤 准教授は話す。パートナー企業の広報担当時代からサービス創造学部の学生と向き合ってきたからこそ、学生たちの自主性を尊重しながらも社会に出てから必要となることを明確に指導する。

公式サポーター企業とのつながりやプロジェクト活動など、学びの環境に恵まれた「サービス創造学部」の資源をもっともっと活用し、社会で活きる力を4年間で伸ばしてほしいと学生一人ひとりの成長を気にかける。

《つづく》

●次回は、Part.2 生産者と消費者を想いでつなぐためのエシカル消費啓発活動です。

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