高等学校とキャリア教育

全国の高校で実施されているキャリア教育の取り組みを紹介

第84回

第84回
高校教育最前線ルポ(新潟県加茂市)
加茂暁星高等学校
「オンライン授業やディベート大会で英会話力を強化、
進学からスポーツ、看護師養成まで、生徒を徹底支援」

インタビュー
学校法人加茂暁星学園 加茂暁星高等学校
校長 
西村 香介 先生
※組織名称、施策、役職名などは取材当時のものです
公開:

新潟県の中央部・加茂市にある加茂暁星高等学校。100年近い歴史の中、近年は国際化に応えて最新の英語教育やICT環境を用意。国際派人材と地元地域を担う人材の育成に努めている。進学実績の向上と共に野球・サッカーなどの部活動を強化。5年一貫の看護師養成にも定評がある。理念や特色、課題を西村校長先生に伺った。

普通科探究コースは英語力を高め、
大学進学実績がアップ

▲西村 香介 校長

本校は1920年(大正9年)に西村大串禅師(大昌寺住職・東京帝国大学文科英文科卒)により加茂朝学校として設立され、2020年に百周年を迎える私立伝統校です。

開学当初、青年たちは早朝座禅を組み、その後授業を受けて仕事に向かっていました。戦後の学制改革により、現在の加茂暁星高等学校に改称。今もその精神は受け継がれ、毎朝「四弘誓願」(しぐせいがん/仏教を信じる者が行う4つの基本的誓い)を静かに聞き、全校集会では私・校長が講話をしています。

仏教精神に基づく真の人間形成が建学の精神ですが、スピーディーに変化する国際化社会に対応し、新潟県が2011年度から実施する「魅力ある私立高校づくり支援事業」の「国際人材の育成」助成対象校になりました。世界とコミュニケーションの取れる「英語力」の養成を目的に、英検2級の資格取得や教室のWi-Fi化も早期に行ってオンライン英会話授業の推進、学習アプリの導入にも力を入れています。

本校は学科構成もユニークで、普通科3コースと、県内唯一の5年一貫教育体制がある看護科・看護専攻科を置いています。

普通科探究コースは25名規模の少人数制で、国公立大学や有名私立大学入試に向けた学習に力を入れています。普段の授業をいつでもどこでも視聴できるeラーニングシステム、英語ネイティブ講師との少人数オンライン英会話(バーチャル英会話教室)も実施。その他外国人講師を招いてのセミナー、福島県のブリティッシュヒルズでの英語合宿など英語力を磨くための特別学習プログラムが充実しています。

また新潟県高校生英語ディベート大会において、本校は主催校となっており、10月の大会では7校18チームによるトーナメント戦で本校Aチームが準優勝を果たしました。進学校も参加する中で本校は高校に入って頑張る生徒が主ですが、オンライン英会話など普段から英語に触れることで、急激な成長を見せてくれています。ちなみにディベートには大きく即興型と準備型がありますが、本校は特に準備型が得意です。今回は「安楽死」がテーマで資料を集めた上で「こう聞かれたら、こう答えよう」と回答を想定。指導教員と練習を繰り返して本番に臨みました。

また英検2級の合格率が、探究コースでは卒業までに65%に達しています。入試改革では英語4技能や英検取得級、表現力が評価されるため、こうした学習を積み重ねることで新しい共通テストなどにも対応できると考えています。

最近の卒業生の進学実績では、茨城大や福島大、新潟県立大、長岡造形大といった国公立大学に5名が進学を果たし、少しずつ進学実績も高まってきています。

スポーツコースは高いレベルで心身を鍛え、
文武両道を目指す

普通科スポーツコースは、対象指定強化部であるサッカー部・硬式野球部、女子バレーボール部の生徒が所属します。火・木・金の7限は「専門活動」の授業に当てられ、他のコースより部活動に時間が割けます。野球部は近年県大会ベスト4やベスト8など甲子園までもう少し、サッカー部も県大会ベスト8や4年前には準優勝など、全国高校選手権まであと一歩まで来ています。

心身を鍛える意味でスポーツは有効で、これら部活動は寮を完備し県外からも資質のある中学生を受け入れています。部活動強化は私立高校として知名度を上げ全校の一体感をつくる狙いももちろんありますが、生徒は礼儀正しく、身の回りのことも自分でする習慣がつくなど成長が見られます。また学習や行事にも集中力を発揮するなど、他コースの生徒の見本になる部分も大きいです。

働き方改革で教員が部活動に時間を割けない時代ですが、本校は頼れる専任監督のもとスポーツで高みを目指し、とことん打ち込める良き環境だと思います。その他の部活動も活発で、大学や専門学校に進学後もスポーツを続ける生徒も多くいます。

普通科普通コースは、英検・漢検など検定学習に力を入れ、生徒の自信と学力アップを目指します。進学先は大学・短大より専門学校が多く、就職希望者もバックアップしています。ちなみに年内希望就職先内定率はほぼ毎年100%です。新潟県は全国的にも専門学校が多く、医療系や保育系、美容系、工業系、コンピュータ系まで選択肢が豊富。また三条市など金属加工のメッカが近くにあり、他にも商業、医療、美容などを視野に就職もしやすい状況があります。

現在、普通科全体で新潟経営大学など本校系列校を含めた大学・短大への進学が3割、専門学校進学者が4割、就職者が3割といった割合です。いずれの進路も応援していますが、今後は大学への進学率を高めていくことを目指しています

看護科は新校舎が完成、
スマホ学習も強化し、5年で看護師へ

▲基礎・成人看護実習室

一方、看護科は専門的知識・技術と豊かな人間性を備えた看護師(いわゆる正看護師)を最短コース(看護専攻科2年と合わせて計5年)で育成します。2018年には新築棟が完成し、ベッド20床での実習が可能な基礎・成人看護実習室、小児・母性看護実習室、キッズルーム、カンファレンスルームなど、より現場に近い環境で知識と技術が身につけられます。実習先も三条市などの病院と提携しています。

一般に高校から専門学校や大学に通うと6〜7年かかるところ、本校は5年一貫で国家資格の取得が可能。カリキュラムはそれだけ濃密で厳しくなりますが、経済的負担が軽く、さらに就職先も引く手あまたの状況です。社会の高齢化を背景に早く看護師になりたいという生徒の資格志向を受け、4年前に2クラス(80名)に募集を増員しました。

また家庭学習の充実から国家試験対策も見越し、2015年からはスマホ学習ソフト『Classi』を導入しています。Webテストを使った課題配信なども行い、自己管理能力や考える力を養成しています。

他にもJICAで活躍する方の講演会、インドネシアの看護師の研修生との交流など、医療の国際化にも対応し見聞と体験を広げています。看護師になるには厳しい病院実習などを乗り越える必要もありますが、5年間仲間と力を合わせ励まし合って頑張っています。

国際社会を生きる力の涵養、
教員の評価システムも課題

▲マレーシアでのホームビジット

本校は修学旅行の行き先がシンガポール&マレーシアで、国際的視野を広げています。

しかし、進路に関しては生徒も保護者も県外よりも地元志向が顕著で、保守的な傾向があります。海外留学したい意向があっても経済的な面で断念する生徒もいて、いかに世界に向かう姿勢を培っていくかは課題です。

また普通科はキャリア教育の面では遅れており、地域との連携強化や職業体験などを教員と共に考えていきたいです。ちなみに私は教員になる前に企業で10年以上のSE、国際業務の経験もあり、今は校長の私がPCやネットワークの管理、メンテナンスなども行っています。今後はアクティブラーニング=参加型授業をもっと進めて生徒の授業への興味関心を喚起したい。自らの社会経験も生かし、国際感覚や外に向かう行動力も培っていけたらと思っています。

また高校全体に言えることだと思うのですが、教員の評価制度が日本では確立されていません。いかに教員が生徒に対して教育的価値をつくれるか、単に生徒からアンケートを取って人気があればいいという話ではなく、教員をどう評価するかのシステムづくりが急務と考えます。

例えば大学や研究機関と連携するなど、外のノウハウをお借りしながら適切な評価制度を構築していきたいです。先生も生徒同様に切磋琢磨することで、刺激ある教育の場が創造できるはず。そして今以上に生徒が溌剌と学び、思い切り大学や社会に飛び出していける学校にしたいと思います。

新着記事 New Articles