高等学校とキャリア教育

全国の高校で実施されているキャリア教育の取り組みを紹介

第86回

第86回
高校教育最前線ルポ(群馬県高崎市)
高崎市立高崎経済大学附属高等学校
「SGH後継プロジェクトやオナークラスの展開で、
地域を支えるグローバル人材を育成」

インタビュー
高崎市立高崎経済大学附属高等学校
進路指導主事 
野村 和弘 先生
※組織名称、施策、役職名などは取材当時のものです
公開:

群馬県の中核都市・高崎市に位置する高崎市立高崎経済大学附属高校。地元では“高経附”の呼称で親しまれている男女共学普通科進学校だ。女子校を礎に1994年から男女共学化し、多様な個性と才能の伸長を図っている。進取・創造の学校づくりを旗印に、芸術教育・部活動にも力を注ぎ、近年は進学校としてオナークラスの設置や高大連携事業の推進、SGH後継プロジェクトなど、文・武・芸にわたる魅力ある教育を展開。英検全員受験など共通テスト対策になる能力養成も進めている。進路指導主事の野村先生に、特徴ある取り組みや今後の展望を聞いてみた。

「自主自律・自学自習」を校訓として、
一人ひとりが輝ける機会を提供自由闊達な校風が人気

▲野村 和弘 先生

本校は1924(大正13)年に高崎実践女学校として創立し、戦後の学制改革により1947(昭和22)年に高崎市立女子高等学校に改称。女子校としての歴史を礎に、1994(平成6)年に高崎市民の熱い要望を受けて男女共学普通科の高崎市立高崎経済大学附属高校となり、現在に至っています。

「自主自律・自学自習」を校訓として、基礎基本を重視した確かな学力を身に付けると共に、部活動や特別活動による人間性と技能の研磨を両立。高い理想を掲げてそれを追求しようとする向上心に満ちた人材、多様な異文化理解と英語のコミュニケーション力を高め、これからのグローバル社会で活躍できる人材育成に努めています。

本校はかつて人文科学系・社会科学系・自然科学系・体育系・芸術系の5系を設置していましたが、前者3系を普通科に統合し、体育系の募集は停止。現在は普通科普通コース(文系4クラス・理系3クラス)、普通科芸術コース(音楽系・美術系)1クラスの1学年8クラス体制です。

全学年1学級35人を基本とした少人数の学級編成を行い、授業はもちろん担任との面談などきめ細かい指導を実現しています。

普通コースでは各学年で文系と理系に1クラスずつ「オナークラス」を設置。オナーとは他を先導する意味もあり、毎年希望者の中から選抜されます。通常履修するカリキュラムの上に大学や研究所等と連携した体験型の学習プログラムを設け、学ぶ意欲や考える力を高めています。

芸術コースでは1年次から専門科目を履修し、音楽、美術を専門的に学びます。音楽系は“音楽のある街・高崎”を象徴するもので、外部講師の多さも特徴です。例えば群馬交響楽団の演奏家である講師の指導を受けられるなど、レベルの高い指導により、生徒の技術向上を図っています。また部活動も活発で吹奏楽部は2018年に西関東大会で金賞を獲得し、東日本大会に出場するなど高い成果を上げています。

また、美術系も東京芸術大学などに対応した受験指導に定評があります。生徒も絵画や彫刻に打ち込む情熱は大きく、美術部や美術展などの活動、各種コンクール等でも高い実績を築いています。

高大コラボゼミや探求活動を活発に展開
向上心を刺激し、思考力・表現力を高める

男子校・女子校の伝統校も多い群馬県の中で、本校は男女共学で躍進しているといえるでしょう。しかし、中学生への説明会や学校行事も生徒が主体となって運営するため、中学生から見ると本校の生徒はイキイキと青春を謳歌しているように映るようです。ベージュ&グリーンを基調とした制服もまた眩しく感じるようで、人気を集めています。

単に楽しい学校というだけでなく、さまざまな活動を通して主体性を身につけ、幅広い興味関心の中から自分の進路実現につなげられる自由闊達な校風があると自負しています。

本校が特に力を入れているのが、高校・大学・産業等の協働による地域コミュニティを支える人材の育成です。2014(平成26)年度からの5年間は、文部科学省から「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」に指定されていました。

今年度からはSGH後継事業として「TSUBASAプロジェクト」という活動を進めていきます。高・大・産の連携によって行う課題研究「日本企業の海外戦略」を柱に、1年次は高崎市内の企業の海外進出等の現状と課題を調べ、2年次は日本の大手企業の仕組みと評価方法を研究し、3年次は日本企業の海外戦略の現状と課題を調べるという流れで研究を積み重ねていきます。

これは将来、地域(高崎市)経済の担い手の創出や地域の防災に携わる人材、この地域の発展を日本や世界へつなげていくことができるグローバルリーダーの育成を図ることが大きな目的です。特に「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」「コミュニケーション能力」「リテラシー」「ツールとしての英語力」「異文化に対する理解力」等を身につけることが目的です。

このプログラムは文部科学省による「地域との協働による高等学校教育改革推進事業(地域魅力化型)の地域協働推進校(アソシエイト)」という指定を受けています。今後も、この事業の指定校として校内外へ教育活動を発信していく計画です。

文系・理系に各1クラス設置したオナークラスの目的としては、①主体的な活動を促すことで興味関心を高め、学習意欲や進路意欲の向上を図る、②企業や研究所等との連携を深めることで生徒の積極的な社会参画の姿勢を育てる、③報告書の作成や発表会を行うことにより、思考力・判断力・表現力を身につけることが挙げられます。

実際、文系のオナークラスでは1年次に高崎市内で海外進出している企業と連携したグローバルリレー講話、高崎経済大学の先生方が審査するディベート大会などに参加しています。

2年生・3年生では高崎経済大学の経済学部のゼミと連携したコラボゼミを実施。これはSGH事業の一環でもありましたが、昨年の3年生は日本航空㈱や㈱IHI、キユーピー㈱など大企業などを対象に海外戦略の事例を研究。8月には本社訪問・インタビュー、9月には高崎経済大学において大学生による発表の後、本校生による概要説明(英語でのスピーチ)や研究成果の発表などが行われました。限られた時間の中で、生徒は発表内容やスライドに工夫を凝らし、堂々と発表していたようです。

理系クラスのオナークラスでは、3年間を通じて多彩な実験や探求活動を体験します。例えば新潟大学の佐渡研修センターに出向き、ウニを使った発生学の実験をしたり、ぐんま天文台で天体観測をしたりしています。他にも足利大学と連携し、“ソーラークッカー”という太陽熱を利用して料理を作る装置の作製を通して自然エネルギーについて探求したり、前橋工科大学とは筋肉を動かす時に出る微弱な電気信号を変化させてロボットを動かす研究も実施。いずれも実験過程や結果をまとめ、成果発表会につなげています。

早朝や放課後補習で、部活動との両立を後押し
切り替える力を高め、広い視野を持って社会へ

これらオナークラスのプログラムやSGH活動で培ってきたノウハウを生かしながら教育活動を進めてきたことは、大学入学共通テストで求められる思考力や表現力の育成につながる価値があると思っています。

まもなく共通テストで記述式や英語の民間試験導入が行われますが、本校は従来からALT(外国人教員)を活用してコミュニケーション力を高めていますし、生徒全員が実用英語検定を受検しているので、その点でもあまり心配していません。実際卒業までにほぼ全生徒が英検準2級に合格し、2級、準1級を取得する生徒もいます。

またアメリカや韓国への海外研修や姉妹校交流等を通して、異文化体験と国際理解教育を積極的に進めています。米国研修はボストン市に生徒(希望者:例年約20~30人)と教職員を派遣。私も一度引率しましたが、午前中は語学研修、午後は現地で起業した日本人起業家の話を聞いたり、マサチューセッツ工科大学やハーバード大学の大学院生の話を聞いたり。海外では「自ら主体的に発信してこそ存在が認められる」ことを体感する良い機会となっています。

進路指導は1年次に都内の大学を見学するなど、早期に進路目標の確立を図り、キャリア教育では看護師志望の生徒向けに病院でのインターンシップを実施。受験対策としては、近年は希望者を対象に7時半から早朝補習を実施しています。

本校は3年のインターハイまで部活動を頑張る生徒も多いため、先生も協力するかたちで早朝補習、さらに放課後の部活動後もシルバー人材の見守りのもと、夜20時30分まで自習できる体制を完備。部活動を一生懸命頑張る生徒にとっては、学校である程度勉強を終わらせられるとあって、保護者の理解のもと自習室を活用する生徒は増えています。

本校の進路状況は1学年280人のほとんどが進学希望で、大半が大学、20人前後が専門学校、数人が公務員としての就職です。群馬県内、東北や北陸、関東、首都圏の国公立大学や私立大学に広く入学しています。

本校は学校生活を謳歌する生徒が多く、文化祭や体育祭、球技大会、演奏会、作品展などで大いに盛り上がりを見せます。ただ、いざ受験に本腰を入れるという時の切り替えが少し遅い面があり、うまくスイッチさせることが課題といえば課題です。近年は生徒も保護者も地元志向が強く、内向き傾向も否めません。

私たち教員も課題を与えて早めに学習習慣を付けるとともに、広く社会・世界に目を向けさせ、いろいろな大学の良さを紹介しながらモチベーションアップに努めています。例えば国公立大を志望するなら後期試験まで、諦めず立ち向かうような粘り強さが欲しいと感じることも。早期に目標をもつことで、計画的に“今”を頑張る。それが自主・自律的な学習・生活態度につながるでしょう。

今後も学校内外に豊富な学習機会を提供し、生徒の好奇心や潜在能力を目覚めさせると共に、多様な他者との協働体験を通してグローバル社会や地域社会で活躍できる人材が育ってくれたらと思っています。

新着記事 New Articles