高等学校とキャリア教育

全国の高校で実施されているキャリア教育の取り組みを紹介

第87回

第87回
高校教育最前線ルポ(神奈川県横浜市)
横浜創英中学・高等学校
「創立80年の伝統に、新たな進学支援体制を導入 
変化を恐れない教育姿勢が生徒の意欲を育てる」

インタビュー
横浜創英中学・高等学校
教頭 
本間 朋弘 先生
※組織名称、施策、役職名などは取材当時のものです
公開:

横浜市神奈川区の住宅街に位置する横浜創英中学・高等学校。女子校として歩んだ歴史を基盤として、2002年に現校名に変更した、中学からの生徒と高校入学者が混合する男女共学の中高併設校だ。個々の進路希望に合わせた3コース制のもと「0時限講座」や「GMARCHプロジェクト」を進め、生徒のやる気を向上。2018年度に東大合格者も出るなど、近年の進学実績の伸びは著しい。創立80周年記念事業の一環として、2020年に新校舎が完成する予定で、教育のソフト面はもちろん、ハード面でも充実を図っている。同校の本間教頭に、躍進の秘訣となる教育の特徴や進路支援体制、教育ビジョンなどを伺った。

「考えて行動のできる人」の育成を建学の精神に、
学業と学校行事・部活の「二兎を追う」がモットー

▲本間 朋弘 先生

本校は1940年創立の京浜高等女学校(戦後からは京浜女子高等学校と堀井学園女子中学校と校名を変更)を前身に、2002年より現名称に変更し、男女共学校として新たなスタートを切りました。来年で創立80周年の歴史と伝統を誇ります。

開校以来「考えて行動のできる人の育成」を建学の精神に、「智に優れ、徳高く、健やかに」を校是に掲げ、社会で活躍できる人材の育成を方針としています。

生徒には常々、「学業と学校行事・部活動との両立」を図り、「二兎を追う」学校生活を推奨。学業では日々の授業や特別講座、家庭学習を通じて確かな学力を身につけ、学校行事や部活動では目標に向かってチャレンジする力や共感を持って他者と協働する力を会得して欲しいと考えています。

これから変化の激しい社会を生き抜くためには「確かな学力」と「豊かな人間力」の両輪は不可欠。実際に生徒一人ひとりが勉学に真摯に取り組むだけでなく、創英祭や体育祭などの行事は活力に溢れ、部活動でも多くの成果を挙げています。例えばハンドボール部女子、ソフトテニス部男子、サッカー部などがインターハイに出場を果たしているほか、バトン部や吹奏楽部などは全国大会で実績を残しています。一流の人は自分がリーダーの時も一生懸命で、支える側に回っても手を抜かない、そんな人間育成に努めています。

3コース制のもと、計画的できめ細かな指導を徹底 
GMARCHを主に合格者が年々大幅に増加中

高校では生徒個々の豊かな個性を伸ばし、それぞれの進路実現を叶えるために3コース制をとっています。

「特進コース」は早稲田・慶應・上智・東京理科大などの最難関私立大学を進路目標とするコースで、1年次より国公立大学や難関私立大学を視野に入れた教育課程を編成し、週3回7時限授業を実施。昨年度は開校以降初めて東京大学理科一類に現役合格者を輩出しました。

「文理コース」はGMARCHや準難関大学を進路目標とするコースで、私立文系・理系の3科に重点を置いた教育課程を編成。3年次からは指定校推薦を受けずに一般受験で大学入試に向かうチャレンジクラスを設定し、一般受験層の拡大を図っています。近年は高い目標に挑戦する力を生徒から感じることができます。

「普通コース」は日東駒専等の中堅私立大学や芸術系・体育系・幼児保育系など多様な進路目標の実現を目指すコースで、豊富な選択科目を設置しています。

大学合格は唯一の教育目標ではなく、ましてや生徒の人生の最終目標でもありません。しかし、希望する大学に合格することは生徒の夢の実現の第一歩であり、学校はその実現のための責任を負っていると考え、充実した進路指導体制を整えています。

進路意識の向上に向けた実践としては、年4回に及ぶ計画的な面談指導を実施。4月・9月・11月における年3回の二者面談に加え、6〜7月にかけては三者面談を実施。高校3年次にはベネッセ「Compass」を活用した面接指導を行い、模擬試験の結果をもとに大学・学部・受験方式・受験科目などに応じた合格可能性を細かくシミュレーションし、生徒の志望校決定を支えています。

模擬試験はベネッセのスタディサポート・進研試験を活用し、高校1・2年次は年間5回、高校3年次は年間4回の試験に参加。1年次から受験前に「合格ライン」で模擬試験の度に、個人ごとの目標得点を設定。成績票返却の際は、担任が個人成績票を分析して生徒の課題と具体的な目標を把握させ、そのサイクルを継続させながら志望校の確定につなげます。

模擬試験の目標設定・事前課題⇨受験⇨自己採点⇨復習⇨新たな目標設定というPDCAサイクルをしっかり回すことで、生徒のモチベーションを向上させているのです。

毎年6月には、高校2・3年生を対象にMARCHを中心とした大学入試説明会を実施。それぞれの大学を文系・理系に分けて10講座とし、進路支援部や各教科の先生方が入試動向と各教科の問題分析・対策の講話をします。参加者は年々増えて、今では約500名。特に2年生の進路に対する関心の高まり、早期の意識づけに役立っています。受験する仲間との一体感、受験は団体戦の意識が芽生え、学校全体の進学に向けた雰囲気づくりに効果を上げています。

授業以外の夏期・冬期・春季休業中に実施される特別講座も充実。夏期は4期に設定され、各期90分の講義が5日間で行われます。

また、一般受験を考えている生徒を対象に、始業前の早朝7時20分から8時10分までの時間を利用した「0時限講座」を実施しています。

本校は部活動に所属している生徒が大半のため、放課後の講座を受講しにくい面があります。そのため「朝に講習をして欲しい」という生徒の要望をくみ取り、現在は2年次の3学期から3年次の2学期までの3期に、毎回5教科15講座を開講。先生方は大学入試問題を分析した上で自主教材を制作し、生徒の学力向上に直結する質の高い授業を展開しています。

さらに学習記録手帳を導入し、生徒は週ごとの学習時間など目標を立てて記録。週に一度は担任が回収し、学習時間の記録を確認。その結果、学習習慣の定着や時間管理能力の向上、効率的・計画的な受験勉強の徹底が図られています。

このような取り組みから2018年度の現役生の大学合格実績は大幅に伸び、国公立大学は9名、早稲田・慶應・上智・東京理科大学は16名(2016年度は1名)、GMARCHは72名(同16年度は27名)、成蹊・成城・明治学院・國學院・芝浦工業大学の準難関大学は45名(同16年度は35名)の合格者を出しました。

主体的な授業を実践し、表現力や課題解決力を養う 
大学入学後や社会を見据え、一流の人材を育てたい

本校では、「主体的・対話的で深い学びの実現」を目標に、先生方一人ひとりがアクティブ・ラーニングも実践。生徒に書く・話す・発表する機会を提供し、いろいろな人とつながって表現力を高めたり、知識・経験・技能を総動員して自分の考えを導き出したりする授業を展開。社会に出てから必要になる能力の育成といった活動目的をしっかり明確化した上で、受験指導との両立も図っています。

またキャリア教育という側面からは、「総合的な探究の時間」を「創学(創造的思考力育成学習)」と名付け、志を持って物事を探究し、世の中をより良くする人材育成を目的に3年間のプログラムを展開しています。

1年次は「WILL TREE」をテーマに、人生を木に見立てて将来の夢や目標を可視化。自己を理解する⇨職業・社会を知る⇨将来の目標を明確にする、という3段階のステップを経て夢をデザインします。

2年次は「Quest Education」として「教育と探求社」提供の教育プログラムを活用。同社が提携するテレビ東京、パナソニック、富士通、三菱地所などと連携し、各分野の職業内容を知り、職業観を育てるとともにプレゼンテーション能力を高めます。1学期は1クラス8班に分かれて企業にエントリーし、インターンシップとして各企業が提示する課題に取り組みます。2学期は各企業からのミッションを受け取り、班ごとに企画会議を開いて企画案を完成。3学期はクラス代表班を決め、学年全体の場でクラス代表が企画案やプレゼンテーション力を競い合っています。

3年次は「World Innovation」。チームで社会における課題を設定して、改善案を考え、クラス発表・学年発表につなげます。

同時に、本校では生徒が一流の人の話を聞く機会を定期的に設定し、希望者を対象に講話会を実施しています。2019年の7月には、連続起業家(シリアル・アントレプレナー)として世界を飛び回っている孫泰蔵氏をお迎えし、「これからの時代の変化」ついて語って頂きました。約30名の生徒が熱心に聴講し、質問。さまざまなプロジェクトの紹介に、若い世代も自由に創造力を発揮するチャンスがあることを実感しました。今後も一流の講師を見極めて招聘し、生徒に刺激を与えていく予定です。

ちなみに高校2年次には6日間の海外研修旅行を実施しています。現在は、オーストラリアの複数都市から生徒自身が自分の興味に応じてコースを選択。生徒一人一家庭のホームステイが行われ、英会話と異文化理解を実体験します。本校では1・2年次に外国人講師による「英会話」の授業が小集団で設定されており、英会話力も高めています。

新しい大学共通テストで求められる英語4技能については、高校1・2年生を対象に実用英語技能検定試験を全員が受験。高校2年次までに従来型英検の準2級・2級を取得すること、高校3年次の新型英検でもハイスコアを目標にしています。

時代が変化する中で、大人が変わることに躊躇しては子どもも成長は難しいでしょう。本校には変化を楽しみ、改革に参加する意識の高い、若い心を持った教員が集結していると自負しています。また勉強や部活動を純粋に楽しむ生徒が多いことも、教員の励みです。

今後も本校は生徒の夢・実現へ向かう開かれた巣箱として、将来に大きく羽ばたけるよう成長をしっかり支えたいと思います。

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