高等学校とキャリア教育

全国の高校で実施されているキャリア教育の取り組みを紹介

第89回

第89回
高校教育最前線ルポ(本校:茨城県高萩市、兵庫県養父市)
第一学院高等学校
全国主要都市に52キャンパスを設置する通信制高校
東京・四ツ谷キャンパス「成長実感発表会」レポート

インタビュー
第一学院高等学校 四ツ谷キャンパス
中根 延也 キャンパス長
※組織名称、施策、役職名などは取材当時のものです
公開:

9月26日に第一学院高等学校の東京・四ツ谷キャンパスで「成長実感発表会」が行われた。半期の学習の成果を発表し、他者と共有することで、生徒自身が成長を実感し、次のチャレンジへ挑戦していく機会と位置づける。発表会に参加し、中根キャンパス長から話を聞いた。

緊張しても、発表を楽しもう!!
キャンパス長の挨拶で発表会が始まった

▲中根 延也 キャンパス長

発表会は年2回。半期の学びの振り返りのタイミングで行われる。生徒は4月から9月の間で、研究や学習した内容、体験してきたこと、みんなに知って欲しいことをテーマに、プレゼンテーションまたは掲示で発表する。

プレゼンテーションでの発表は5分間。「どの様に相手に伝わるか、伝えられるか」がポイントとキャンパス長は生徒に投げかける。

前回までは対面形式だったが、今回からオンライン形式を併用。カメラの向こうの視聴者も意識しなければならず、発表のハードルは前回より高くなるが、より多くの経験ができるチャレンジの場と考える。

生徒にはプレゼンテーション発表または掲示物を作成することを通して、自分自身の成長を感じてもらう。また、他の発表や掲示を見て、たくさんのいいところを発見し、相手にフィードバックしてあげる。そして、自分自身の次のチャレンジのモチベーションにしていく。

今回はオンラインでの配信することで、より多くの保護者に我が子の成長を、観てもらい、保護者・教員など多くからのフィードバック生徒に戻していく。

発表者も聴衆も、
会場全体が発表を楽しむ

午前の部で、16組のプレゼンテーション発表を行われた。

歌やプロ野球、旅、ロックバンド、VTuber、サンバ、ファッション、学校行事の振り返りなどにバラエティー豊かで熱量の高い発表が続く。発表のスライドには写真や動画、音源を使われ、わかりやすく、クイズが投げかけられたり、見る側を飽きせない。

発表の多くは、単なるレポートではなく、相手にも興味を持ってもらうことや、行動に移してもらうためのストーリー展開があり、発表者の目的意識が感じられた。

注意喚起や啓蒙を呼びかける発表では、生徒や教員にアンケートを行い、客観的なデータ集めたり、自分の経験をもとづいた理論構成など根拠を明確に示されていた。発表の中で将来やりたいことを発表する生徒もいた。発表を通し自分自身と向きあうことで、将来自分がやりたいことを知る機会ともなっているようだ。

各発表後に進行役の先生が短い感想を述べる。発表者へのフードバックと、聞いている生徒と一緒に振り返り、気づきを促しているのが印象的だった。生徒と観覧者は、各発表を観てWEB上のアンケートに各発表のコメントを入力する。

午後の部では、28組の掲示発表がオンライン形式で行われた。

案内役の生徒が「なぜそのテーマを選んだのか、どこを一番見てほしいか」を紹介していく。制作者が自分自身で説明したり、ナビゲーターがフィードバックしたり、先生がコメントしたり、みんなで掲示発表のいいところを挙げていく。発表終了後、生徒はライフログを記入してイベントの振り返りを行っていた。

成長実感発表会を通して
生徒たちが実感したこと

「スライドを使ったプレゼンや自分の意見を発信することは、今後必要になってくるので、発表の機会を設けてもらい、経験を積むことでステップアップできたと感じる」と、3年生の生徒はこれからの進路で必要なスキルが磨けている、と語る。

初めてパソコンでプレゼンテーション資料作成をした生徒も多かったようだが、今回の資料を通じて、達成感と成功体験、次への意欲を感じていることを、生徒たちの表情が語っていた。難しい発表で聴衆を置いていくものはなく、受け手の理解に寄り添った発表が多かった。

「興味のない人に、いかに関心を持ってもらえるかを、考えながら文章を構成していくことで、視野が広がった」

友人と組んで発表した2年生の生徒は、振り返る。生徒や先生に専門用語についてのアンケートを行い、言葉の認知度を確認。専門用語の言い換えや表現を見直しなど細かいところまで気をつかったと教えてくれた。

「なにかを表現すること、発表することがすごく好きになれた。それと同時に大切なことだと実感することもできた」

3年生の生徒は話す。「掲示よりプレゼン発表の方が、達成感がある。自信の積み重ねの経験がいまの自分をつくっていると感じるし、よくここまで出来るようになったなと、自分自身でも実感する。多くの人が、自分の想いを伝えることの楽しさを知ってもらい、そして、自分自身の成長を実感してほしい」と後輩たちの成長を気にかける。

多くの生徒が緊張をしながらも発表を楽しんでいる様子が印象的だった。

「発表することの面白さを知り、将来はプレゼンをする仕事をしてみたいと思うようになった」と人前で話すことが苦手から得意になったと、2年生の生徒は自分の夢を教えてくれた。

発表を終えて生徒からの感想を聞き、「成長実感発表会」を通して、学びのサイクルがまわっていることを、改めて実感することができた。

お互いに支え、学び合う 
四ツ谷キャンパスの生徒たち

今回取材した四ツ谷キャンパスは、閑静な文教地区で近隣に大学もあり、史跡も多い。落ち着いた環境で学びたい生徒に人気のキャンパスだ。

生徒の実践・自主性を大事にし、学び合う姿勢や、相互でフォローし合えるのがこのキャンパスの大きな強みだと、キャンパス長の中根先生は語る。「プラスサイクル指導法」で生徒を前向きに支え、人生を豊かにする力を育むと、独自の意欲喚起教育を説明してくれた。

「当校へ入学してくるとき、前の学校で否定され、うまく行かなかったことを経験している生徒に、自己肯定感を持ってもらうことからスタートする。まず、自分の良いところを人から見つけてもらい、自分でも見つられるようにしていく。次に、ほかの人との関わりを通じ、相手に感謝されることを行い、人への貢献を通し、他者を認めていき、自他肯定感へとつなげていく。そしてまた様々なことにチャレンジしていくサイクルが生まれていく」

教員は朝礼・終礼で生徒のよかったところを報告し合う。この「もっともっと自分を好きになる」自分づくりの称賛活動を通じ、生徒へフィードバックを行っている。

第一学院は、生徒と先生の距離が近く、相談しやすいし、しっかり見てくれる学校だと、3年生の生徒が教えてくれた。一生つきあう「自分」を好きになり、自分自身と向き合い、プラス思考で自分の意欲喚起する力を生徒が身につけるために、教員たちは生徒の話に耳を傾ける。

「成長実感発表会を通じて生徒の成長を感じ、次のチャレンジへ姿勢の変化を見てとれるのが、とても嬉しくて楽しい」と中根キャンパス長が大きな手応えを感じていた。

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