Teaching Staff Life…ベテラン教員から後輩に贈るメッセージ
#07知見と視野を広げ、
自分を成長させる余裕を持つ
進路指導 主事
大塚 直樹 先生
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江戸川を挟んで東京都と隣接する千葉・市川。同校は旧制中学と高等女学校を前身に持つ千葉県の伝統校だ。文化祭などの行事に旺盛に取り組む自主自律の校風を特色とする。部活動も盛んで、全国大会にも複数進出している。
各校で異なる進路のイメージ
新任では創立3年の新設校に赴任しました。やんちゃな生徒もいましたが、私が悩みを相談する先輩もまだ若いという学校でした。そのころの生徒指導では、私自身が強く当たるタイプではないので、言う事を聞かない生徒には苦労もしました。ただ生徒たちと歳も近いので、共感するところも多かったです。
就職希望の生徒が多く、進路指導では就職先の開拓で各企業を回りました。幸い、景気が好調なころで就職希望者の1・5倍の求人が来たりする時代でした。
後に赴任した進学校の進路指導では、先生はむしろバラバラに独自の指導をしないで、組織的な体制を作る必要がありました。進路のイメージも進路指導部の役割も、学校ごとに千差万別ですね。
指導重点校などでは進路指導部は実績を作り結果を出すことも求められています。一方で、生徒にとっては必ずしも偏差値の高い大学に行くのが幸せではなくて、好きな事をしたいと思う生徒もいます。結局は生徒の希望や適性を見ながら、結果も連動させていくという指導法になるんだろうと思います。
指導には生徒指導・教科指導・進路指導がありますが、生徒指導は学校のルールを守るなど生徒にとって耳の痛い指導です。
一方、進路指導は生徒自身の将来に役立つ指導です。進路指導部員だけがこれに携わると、担任の先生の役割が偏ってしまいます。ですから、担任の先生に情報を集中して、進路についてもできるだけ担任が指導をするのが望ましいと思っています。
教科指導は教員自身が
勉強の連続
中学のころから理科が好きで、高校に入ると物理・化学・生物・地学に分かれると特に生物が好きになりました。生物の先生も尊敬できる方で、あんな先生になれたらいいなと思う一方で、動物園の飼育係とか獣医も選択肢の一つではありました。
農学部や獣医学部も魅力ではありましたが、結局、教育学部に入ったことで教員を目指すことになり、教員の身分のまま夜は大学院にも通いました。生物は、教科書の改訂ごとに新しい発見が盛り込まれる生きた学問でもあります。絶えず勉強が欠かせませんし、教材研究に完成形はないですね。進学校では授業を開発し実験を組み立てたり教材研究したりで、土日もやっていた時期もありました。
試行錯誤してうまくいった授業方法でも2、3年続けると何か違うんじゃないかと思い始めて、大学の先生のようにパワーポイントを使うのがいいかと思ったり、アクティブ・ラーニングではないですけど、生徒と質問・回答の掛け合いで進めてみたり、他の先生の授業のやり方も気になってみたり。生徒の好奇心をかき立て、楽しませたいと常に考えていました。
生徒自身も伸びた、力がついたと実感できたときは幸せを感じるはずです。しかし、それを毎回作るのはやはりたいへんですね。勉強の連続ではあります。
頑張りすぎ忙しすぎは
アンバランス
初任校は新しい学校で、周りも若い先生ばかりでお互いに試行錯誤するばかりでした。2校目で年配の、いろんな事を知っている先輩と出会えたときは、本当に沢山の事を教わりましたね。いろいろなタイプの先輩の先生を見てきて、真似するべきところは真似して、ああなりたくないなと思ったら反面教師にするというスタイルでやってきました。
何がわからないのかがわからないという面もありましたが、悩んだとしても自分で解決しようとすることも多くて、先輩に面と向かって尋ねるということがありませんでした。ですから若い先生方にも、ああしろこうしろとは言いません。職人芸ではないですが、教員も見て学ぶ面は多いと思いますね。
これまで生物部、自然観察部、山岳部など毎日の練習はない部活を担当することが多かったのですが、同僚には土日全部が部活という先生も多いです。
若い先生はみな熱心で優秀ですが、学校の仕事はやることも多くて忙しいのも事実です。
本校のような、やればやっただけ生徒が伸びる余地がある学校ですと、先生も頑張りすぎるとバランスを崩してしまう傾向にあります。学校だけの狭い世界だけではなくて、知見と視野を広げることができるといいと思います。映画を観るのでも出かけるのでもいいですから、自分を成長させる余裕を持ってほしいですね。
千葉県立国府台高等学校
進路指導 主事
大塚 直樹 先生
[プロフィール]
千葉大院修了。県内各校で進路指導部長などを歴任。現在は進路指導主事を担当。