ティースタライフ

Teaching Staff Life…ベテラン教員から後輩に贈るメッセージ

#09

全てを完璧にではなく、
まずは教科指導をきちんとやろう

武蔵野大学附属千代田高等学院 
進路指導部長
中村 和憲 先生
※部署名、役職名などは取材当時のものです
公開:

1888年に島地黙雷(しまじ・もくらい)・八千代夫人が創設した女子文芸学舎をルーツに持つ武蔵野大学附属千代田高等学院。2016年に同系列の武蔵野大学と法人合併し、18年からは共学化となった。同年より国際バカロレア校の認定を受けたIBコース(国際バカロレア)のほか、IQ(文理探究)、GA(グローバルアスリート)、LA(リベラルアーツ)、MS(メディカルサイエンス)の5コースを擁し、進路は海外留学から看護、薬学、またスポーツ界ほかの幅広い分野に亘るだけでなく、在校生の留学も盛んだ。

キャリアプランから進路構築

本校は浄土真宗本願寺派宗門校という位置付けで、全国に72校ある龍谷総合学園に所属しています。仏教特に親鸞聖人のみ教え、、、を建学の精神としており、自分自身のことだけを考えるのではなく、他者との共同つまりエゴを排して共に生きることを教育活動に取り入れています。

私も初年度のころには親鸞聖人の教えを紐解く「宗育」を担当したこともあります。本校の教員は、先輩方からの助言及び宗教行事を通して、教育理念と建学の精神を自然に学んでいます。この建学の精神は、自分自身の教育に迷いが生じた時に、原点に立ち戻るという意味でも非常に大切にしているものです。

本校の進路指導は、単なる出口確保の進学指導にとどまらない、人間としていかに生き、何をどのように学び続けるのかを考えさせ、そして、個々のキャリアプランに基づいて進路を構築するよう心がけています。

指定校推薦を活用して進学する生徒もいますが、学科がこれほど多岐にわたる今だからこそ自分が本当に学びたいテーマに沿って、行ける大学より行きたい大学に、生徒と教員が共に努力してチャレンジする傾向が強くなってきています。

生徒指導は、自分と周囲との関係という捉え方が生じるので、生徒によって受け止めが難しい面があるのですが、進路指導は、達成できるかどうかは別として、指導される側が自分自身の問題として受け止めることができることが、特徴ではないでしょうか。

教員志望の学生がほとんどいない中での
採用試験対策

子どものころは電子工学に興味があって、工業高校に進学したいと思っていたほどですが、もう少し広い視野で進路を考えたいと思うようになり、普通科に進学しました。

しかし、英語の勉強が楽しくなって、とりわけ弟や友だちに教える楽しさに出会ったのが、このころです。電子工学から英語の教員に進路を変えて、英文学科を志望するようになりました。

大学では、もともと興味のあったアメリカの文化やアメリカ南部作家の研究に熱中しました。ブルースの背景となるアメリカの文化や歴史を研究する一方で、バイクのサークルに入ってあちこちにツーリングに行ったり、塾の先生や家庭教師としても教えたりもしました。

教員を目指していたものの、私の大学では周りには教員志望の学生は非常に少なく、今とは違って情報も少なかったのですが、教職センターの先生が発起人となり勉強会を開いてくれました。その会を通して情報収集し、教員採用試験の対策を続ける日々でした。

すべてにつながる教科指導力

塾、家庭教師、教育実習と経験を積めば積むほど授業力が向上し、そこそこ自信がある状態で教員として働き始めました。

実習先で「これからの教員は生徒に知識だけでなく創造力をつけさせることが重要だ」と学び、それを目標に掲げました。しかし、上手くいくクラスといかないクラスが出来ました。より良い授業を、と努力していましたが、重要項目をしっかり教えるのと生徒が授業に集中し学力が向上するのはまた別なのだと思い知らされました。こちらが喋っているだけの、ひとりよがりの授業なのではないかという戸惑いもありました。

それを打開できたのは、うまくできている先輩に聞いたり、観察したり、あるいは語研をはじめさまざまな研究会が主催する研修会に参加するようになってからです。研修会では、授業のコツと言いますか、このようにしてうまくいったという授業の実践例をベテランの先生が発表してくれます。それを学んで授業に生かしました。

今のように書類の提出に追われ、教員が忙しくなり過ぎていなかったということもありますが、教員間のコミュニケーションは当時の方が密だったように思います。あとは、授業や生徒指導で悩んだ時は、すぐに教科指導や学級運営の本を探して読むようにしていました。

私は最初の授業の中で、「この点は頑張ろう」という評価するポイントを明確に伝えて、授業以前の決まりごとをクラス全員で共有しています。

一人ひとりの顔をよく観察し、授業に対する集中力を引き出し、生徒をコントロールする力は必要なスキルです。コントロールというとよくない言葉に聞こえるかもしれませんが、コントロール不能になったため、思い通りの授業が展開できなかったという経験をしたことはないでしょうか。そして、コントロールするために、一度決めた決まりごとをゆずらないことも大事ですね。

今の若い先生方は総じて真面目です。また教科指導に関しては大学でかなり訓練を積んできて、授業展開も非常に上手い。しかし実際に生徒が相手となるとなかなか上手くいかない。それは生徒をコントロールできていないからだと思います。その点を克服できれば、良い授業そして信頼される教員になっていくと思います。

教員の仕事は、全てを完璧にやろうとするのは無理です。それぞれ60〜70点でよいのではないでしょうか。しかし、教科指導だけは別です。教科指導をきちんとやっていれば、それは生徒指導にも進路指導にも結びつきます。教材研究に時間をかけ、生徒自身が成長を感じられる授業、興味を引く授業、そういった授業を心がけてほしいと思います。

武蔵野大学附属千代田高等学院 
進路指導部長
中村 和憲 先生

[プロフィール]
慶應義塾大文学部卒。1995年採用。教務部、生徒指導部などを歴任。2014年より現職。バスケットボール部顧問。

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