研究室はオモシロイ

大学、専門学校や企業などの研究室を訪問し、研究テーマや実験の様子をレポート

第1回 Part.1

第1回 ロボットによる日常作業の可能性を探る(1)
Part.1
ロボット本体と頭脳を分離して
進化を早める

東京大学大学院
情報理工学系研究科 稲葉 雅幸研究室
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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日本はロボット先進国だ。かつては産業用ロボットが日本の製造業を躍進させ、最近はより人間の生活に近いところでロボットが活躍を始めている。ホビーの世界ではすでに産業化が進み、家庭やオフィスなどにヒューマノイド(等身大の人間型ロボット)が入ってくるのも、それほど遠い将来のことではないかもしれない。そこで、東京大学大学院情報理工学研究科の稲葉雅幸先生の研究室を訪ね、最先端のロボット研究について話をうかがうことにした。(Part.1/全4回)

▲稲葉 雅幸 教授

稲葉先生の研究室は、情報システム工学研究室と呼ばれていて、日本のロボット研究を常にリードしてきた歴史を持つ。現在も、日常生活支援ヒューマノイド、筋骨格ロボット、小型ポータブルロボット、感覚行動統合型ヒューマノイドなど多彩な研究を進めている。そのなかから、日常生活支援ヒューマノイドに焦点をあてて詳しく教えていただくことにしたが、その内容に入る前に、研究室におけるロボット研究全体の特徴をうかがった。

「この研究室では、人間型ロボットの研究は1990年代に入ってから始まりました。小さいけれど人間の形をしていて歩行できるロボットをつくろう、というところからスタートしています。その研究を進めるとき、本体と頭脳部分であるコンピュータを分けて、無線でつなぐ方式を採用しました。本体に積めるコンピュータでは処理能力に限界があるからです。

それに、本体と頭脳を別にすることで、それぞれを独立させて研究できるという利点もあります。ロボット本体は短期間にいろいろな種類のものをつくれるし、頭脳であるソフトウエアもどんどん進化させて、いつでも本体とつなぐことができます。この方式を、脳を持ち歩かないロボット、英語でリモートブレインロボットと呼んでいます」

頭脳部分のソフトウエアは、人間型以前のロボット研究からずっと継承され進化してきた。いわば研究室の財産といえるものだ。

ロボットを使う研究と
つくる研究を両立

▲HRP2

現在の研究では、ロボットを使う研究とつくる研究を並行して進めているのも大きな特色だ。使う研究の代表例は、日常生活支援等身大ヒューマノイド「HRP2」で、つくる研究の代表例は柔軟筋骨格ヒューマノイド「小太郎」だ。

「HRP2は、国のプロジェクト研究で開発されたプラットフォームで、2003年から国内外の大学や研究所で利用できるようになったものです。このHRP2では、ロボットを使う研究、もう少し具体的にいうと人間の役に立つ行動をさせる研究を行っています。

▲「2005 愛・地球博《NEDO次世代ロボットプロジェクトプロトタイプ展》」出展。超多自由度可変柔軟脊椎筋骨格型ヒューマノイド「小太郎」

小太郎は、背骨構造を持つロボットで、人間のように複雑でしなやかな運動をさせるための体のつくり方、頭脳のつくり方の研究に取り組んでいます。使う研究とつくる研究の両方を行い、お互いの成果も生かしながらロボット研究を発展させていこう、ということです」

HRP2は、国のプロジェクト(研究室の前任教授がプロジェクトリーダーを務めた)によるものだが、実は研究室で蓄積したきた技術がベースになっている。

研究室では、小型ロボットとは別に、1994年頃から人間サイズのロボットも開発していて、H1号機からH7号機までつくった。そのうち6号機と7号機はメーカーに外注し、そのメーカーが7号機までの技術も踏まえてHRP2を製造したのだ。

《つづく》

●次回は「HRP2による4つの研究テーマについて」です。

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