研究室はオモシロイ

大学、専門学校や企業などの研究室を訪問し、研究テーマや実験の様子をレポート

第6回 Part.3

第6回 化石を通じて未来の環境変動を予測(3)
Part.3
化石の保存状態がいい
北海道で調査を実施

早稲田大学
教育学部 地球科学教室 平野 弘道研究室
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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地球温暖化に伴う環境変化は、人類を含む生物にとってきわめて重大な問題だ。そのため、政治や経済の立場からは、人為的な要因としての二酸化炭素排出量の削減について世界レベルで議論が重ねられている。学問の世界でも、地球科学分野を中心に温暖化を含む地球環境の研究が活発化していて、古生物学の立場から地球環境にアプローチするケースも出てきている。古生物学は、化石の研究というイメージがあるが、どのような視点、どのような方法で地球環境に迫ろうとしているのだろうか。今回は、早稲田大学教育学部(および大学院創造理工学研究科)の平野弘道先生の研究室を訪ね、古生物学による地球環境の研究について教えていただくことにした。(Part.3/全4回)

▲平野 弘道 教授

研究室として対象にしている時代は白亜紀だが、その調査対象地は北海道が中心になっている。これは、アンモナイトに関連して触れたように化石の保存状態がいいためだ。また、対象とする化石類は、大きく見ると3つに分かれている。それは、大型軟体動物化石(アンモナイト類、二枚貝のイノセラムス類など)、微化石(放散虫、有孔虫、渦鞭毛藻、花粉など)、そして炭素同位体だ。

研究室に所属する卒論生、大学院生も基本的に、こうした化石類の研究に取り組んでいる。たとえば2007年度の場合、卒論生は5人いて、夏に2か月程度、北海道に赴いて調査を行う予定になっている。調査する地層は白亜紀のものと決まっているが、研究テーマは、アンモナイト類、イノセラムス類と炭素同位体、花粉胞子類、渦鞭毛藻類、放散虫と1人ずつ異なっている。

地質調査による地質図作成と
化石採集を同時に進める

「今年度の卒論生は全員、北海道の同じ場所で調査を行うことになっています。現地では、地質調査をして、5,000分の1ぐらいの地質図をつくることが研究のベースになります。その調査をしながら、各自がターゲットにしている化石の採集も行います。大型化石の人は、岩石を割って化石の有無を確かめ、あったら持って帰ります。微化石の人は、その場では有無がわからないので、とにかく岩石を持って帰ります。

化石そのものの調査は現地ではできないので、秋になってから研究室で行うことになります。たとえば、アンモナイトだったら、小さなタガとハンマーで岩石を削り、形がある程度見えてきたら、小型の削岩機を使ってアンモナイトの周りに石がついていない状態にします。そうすると、種のレベルでの同定、つまりどの種類のアンモナイトかを決めることができます。

それから、作成した地質図と照合して、対象地域ではどういう種類が多かったかを明らかにしていきます。

微化石の場合は、肉眼では見えませんから、細かく粉砕したのちに薬品処理をしたり遠心分離器にかけたりして、化石を取り出します。それを顕微鏡や電子顕微鏡で見て、1つずつ種類を決めていきます。そして、地質図と関連づけながら結果をまとめていきます」

卒論生の研究は、そこまで進めるので精一杯だという。とはいえ、種を特定できると、産出した地層の時代をほぼ決めることができる。明治以降の膨大な調査の積み重ねによって、どの種がどの時代に存在していたかを照合できるようになっているからだ。また逆に、こうした研究が時代区分の精度をさらに上げることにもつながっていく。

そして、大学院生になると、アンモナイトを水平方向(巻きながら成長した方向)にスライスして内部の様子を観察するなど、より詳細な研究に取り組むことになる。

《つづく》

●次回は最終回「中国での地層調査と今後の展望ついて」です。

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