研究室はオモシロイ

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第8回 Part.2

第8回 食品のおいしさや健康効果を探る(2)
Part.2
オリゴ糖の生成量が多い
コシヒカリ系の米

実践女子大学
生活科学部 田島 眞研究室
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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食への関心は年々高まる一方だ。とくに最近は、よりおいしく食べることや、食を通じての健康づくりなどが注目されている。では、学問の場では食について、どのような研究が行われているのだろうか。今回は、食品学の立場から食にかかわるテーマを研究している、実践女子大学生活科学部の田島眞教授(学部長)の研究室を訪ねた。(Part.2/全4回)

人々の食への関心は高まる一方だが、最近は、よりおいしく食べることや、食を通じての健康づくりなどが注目を浴びている。今回は食品学の立場からこれらのテーマにアプローチしている、実践女子大学生活科学部の田島眞教授(学部長)の研究室を紹介。前回に引き続き、オリゴ糖とお米のおいしさの関係についてさらに伺ってみよう。

オリゴ糖が酵素の働きでできることを明らかにしたのち、酵素の活性(働き方)と米のおいしさの関係を探った。

「古米はおいしくないといわれますが、それは、貯蔵していると酵素活性が落ちてしまうからだということがわかりました。とくに、温度が高いところに置いておくと酵素活性がどんどん下がり、1か月で半分ぐらいになってしまう。酵素活性を下げないで保存しておくためには、温度が低いことがポイントになるのです。たとえば、家庭で米を買って保存しておくなら、冷蔵庫に入れておくといいです。そうすれば、2か月ぐらいは酵素活性が下がりません」

田島先生の研究室では、米の品種ごとのおいしさも調べている。

「30品種ぐらいの米を調べましたが、コシヒカリ系のものがおいしいことがわかりました。コシヒカリだけでなく、あきたこまち、ひとめぼれ、初星などコシヒカリを品種改良したものを含めてです。

コシヒカリ系は一般的に好まれていますが、実際に炊いて調べてみるとオリゴ糖の生成量が多い。それは、コシヒカリ系は酵素活性が高いからです」

コシヒカリといえば米の代表的な品種の1つだが、ブランドイメージが高いだけでなく、実際においしいことが科学的にも実証されたというわけだ。

米を研ぐ回数は1回で充分 
しばらく水に浸けることも重要

田島先生は、なぜおいしいかにとどまらず、どうすればおいしく炊けるかの研究も進めている。具体的には、米の研ぎ方や水に浸けておく時間とおいしさの関係を実験で明らかにしている。

「昔は、水が透明になるまで研ぐのがいいといわれましたが、そこまで研ぐと米の表面にある糖質(オリゴ糖のもとになる成分など)が流れ出てしまいます。それなら、表面の糖質が流れ出さない程度に研げばいいのではないかと考えて、実験して確かめてみました。

1回、2回、3回と回数を変えて米を研いで、炊いて、オリゴ糖の量は装置で測定し、おいしさは感応検査で調べました。その結果、1回で充分だということがわかりました」

研いだあと水に浸けておく時間も、おいしさを左右する大きなポイントになるそうだ。

「米を研いだあと、すぐに炊くとおいしくない、ということも昔からいわれていました。そこで、どのくらいの時間、水に浸けておいたらいいのかも実験してみました。そうすると、夏場なら30分、冬場なら1時間浸けておくといちばんおいしい、というデータが出ました。

季節で時間に差があるのは、水温が違うからです。酵素は、ある程度の温度がないと働かない。ですから、夏場だと30分でいいけれど、冬場だと1時間ぐらいは必要になるのです。もし、夏場の30分をもっと短くしたいなら、50℃ぐらいのお湯に10分ぐらい浸けておけば、おいしく炊けます」

このように、米のおいしさの決め手はオリゴ糖であることを明らかにしたのが、田島先生の研究室の大きな業績の1つだ。そして、米のおいしさに関する研究は現在も続いている。ごく最近は、蒸気炊飯器で炊いた米のおいしさについて研究し、この8月に学会で発表したばかりだ。

「蒸気炊飯器は、炊飯器のなかに小さな器があって、そこに水を入れておくと熱せられてフタの内側から蒸気が出ます。そうすると、米の表面がしっとりすると同時に、白くテカる『おねば』と呼ばれるものの量が増えることがわかりました。実は、その『おねば』はオリゴ糖の本体なのです。つまり、蒸気炊飯器で米を炊くと、オリゴ糖が多くできるのが確認できたのです」

《つづく》

●次回は「次回は野菜のポリフェノールについて」です。

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