大学、専門学校や企業などの研究室を訪問し、研究テーマや実験の様子をレポート
第9回 Part.3第9回 「超能力」を題材に心の不思議に迫る(3)
Part.3
ESP実験を言語で行うとどうなるか
情報コミュニケーション学部 石川 幹人研究室
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これだけ科学が発達しても(あるいは発達したからこそ)科学の光が届かない未知なるものへの関心(あるいは期待)を抱く人は少なくない。これは一般社会での話だが、学問の世界でも、通常の科学では説明できない現象を研究する超心理学というジャンルがある。
今回は、情報学を専門としながら超心理学にかかわる研究にも取り組んでいる明治大学・情報コミュニケーション学部の石川幹人先生の研究室を訪ねた。(Part.3/全4回)
前回は、石川先生の具体的な研究テーマの1つである「PSI実験」について、実証実験上の問題点を究明していくことが目的であるという話をした。前回に引き続き、ESP(超感覚的知覚)実験の具体的な内容を伺う。
答えたあとに提示される単語を予知できるか?
石川先生は、同様の実験を言語で行うとどうなるかに着目。2年前に実験システムを開発し、テスト的な実験を行った。
実験のハードウエアは、ノートパソコンと乱数発生器を接続したシステム。乱数発生器というのは、ランダムに数字を発生させる機械のことで、この実験では解答群として用意した単語をランダムに選ぶように工夫している。
「コンピュータ画面上のスタートボタンをクリックすると、画面中央に単語の穴埋め問題が提示されます。たとえば『す★め』というように。被験者は、思いついた単語を声で答え、実験者は答えを書き取ります。その直後に被験者は★印をクリックします。そうすると、乱数発生器によって複数の単語のなかからランダムに1つの単語が選ばれ、画面の四隅にサブリミナル提示されます。被験者には★印を見つめ続けてもらうので、四隅の情報は読み取ることができません」
この実験は、取材時に体験させていただいたが、画面の★印を見ていると四隅で何かが点滅しているのはわかっても、情報としては感知できない。こうしたサブリミナル提示にしたのは、サブリミナル刺激のほうがESPが現れやすいとされているからだ。
実験方法に改良を加え
4月から本格的な実験を開始
実験は、石川先生のゼミの学生や一般学生、教職員など約30名を対象に行われたが、この範囲では予知につながるような有意味な結果はまだ出ていない。もともと、このときは予知実験のアイデアを提案することと、本格的な実験に向けて問題点を明らかにすることが主眼だった。その後、実験方法の改良に取り組み、新たな実験システムが完成した。
「主な改良点は、被験者が答えた単語を書き取るのではなく、回答後に画面上の文字を指定する方法にしたことです。書き取る方法だと、聞き間違いや書き間違いが起こる可能性があり、実験データを分析するときにも時間がかかるからです」
被験者は、たとえば『す★め』という問題に『すずめ』と声で答えてから、文字列を表示するボタンをクリック。表示された文字列から★印にあてはまる『ず』を選んで再びクリックする。その直後、画面四隅にランダムに選ばれた単語がサブリミナル提示される。
新システムを使った実験は、この4月から開始する。実験データは、少なくとも50人分、多ければ200人分ぐらい集める計画だ。
《つづく》
●次回は「念力(PK=サイコキネシス)実験について」です。