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風の声

大学で講師を務める評論家久田邦明氏のエッセー

第61回

第61回
青少年施策を考える
(前編)

久田 邦明
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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政権が交代した。社会の大きな変化が、ようやく政治権力のところまで到達したということだろうか。

数年前、ある県の青少年条例の改定について意見を求められたときのことを思い出す。説明を聞いて見当違いなことをするなあと思ったが、担当者と話し合ううちに、それなりに背景のあることが分かった。

一例をあげれば、こういうことだ。酒、タバコの販売や飲食店の深夜営業も高度経済成長期までは業界団体のルートで規制することができた。ところが、その種の団体は弱体化し、さまざまな業態の事業主が乱立するようにもなった。以前のように役所が業界団体に話をして行政施策の体裁を整えるのが無理になったわけである。

そうなると、東京都の場合のように午後11時以降の青少年の外出禁止といったダイレクトな取り締まりを掲げることになる。実効性を二の次にしても、(選挙民への)大向う受けを期待する条例がまとめられることになるわけだ。このような行政施策の方向は青少年施策にかぎらず行政施策一般に共通するものだろう。

このような施策の方向を単純に批判しても意味がない。それは、一人ひとりが孤立して生きる、わたしたちの暮らしのあり方に対応したものだからだ。業界団体や地縁団体の衰弱をあげるまでもなく、日常生活における「おたがいさま」という人間関係が失われて、相互扶助の仕組みに期待することができないとすれば、行政施策は一人ひとりをターゲットにすることになる。

しかし、どうだろうか、このような行政施策の方向は、ますます人々の孤立化をすすめることにならないだろうか。

■内閣府政策統括官 子ども・若者育成支援推進法 概要
(PDFファイル・192KB)
//www8.cao.go.jp/youth/suisin/pdf/s_gaiyo.pdf

久田 邦明(ひさだ・くにあき)
首都圏の複数の大学で講義を担当している。専門は青少年教育・地域文化論。この数年、全国各地を訪ねて地域活動の担い手に話を聞く。急速にすすむ市場化によって地域社会は大きく変貌している。しかし、生活共同体としての地域社会の記憶は、意外にしぶとく生き残っている。それを糸口に、復古主義とは異なる方向で、近未来社会の展望を探り出すことが可能ではないかと考えている。このコラムでは、子どもから高齢者まで幅広い世代とのあいだの〈世間話〉を糸口に、この時代を考察する。

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