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1-7シリーズ1 教員を育てる
Part.7
東京都教職員研修センター インタビュー①
新たな研修制度で若手教員の授業力向上と
リーダー養成をめざす
リーダー養成をめざす
守屋 一幸 課長
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東京都は、2005年度から初任者研修を終えた若手教員を対象とする研修制度をスタートさせ、2006年度にはリーダーになる教員を育てるために「東京教師道場」を開設した。すでに多様な研修制度を整えていた東京都がなぜ新たな制度に着手したのか、東京都教職員研修センター企画部企画課の守屋一幸課長に話をうかがった。
教員の大量退職時期を迎え
若手や中堅の役割が高まる
東京都は、全校種合わせると約5万9000人、高校だけでも約1万人の教員を擁している。その教員の研修で中核的役割を担っているのが、東京都教職員研修センターだ。
同センターは、10年経験者研修を実施し始めた2003年度に研修体系を全面的に改定しているが、その後も見直しを進め、「2・3年次授業研究」「4年次授業観察」「東京教師道場」という新たな研修制度を設けた。矢継ぎ早に新機軸を打ち出している理由を守屋課長は次のように説明する。
「研修体系の骨格は2003年度に改定したものと変わってはいませんが、そこに『2・3年次授業研究』『4年次授業観察』『東京教師道場』という新たな研修制度を加えました。その背景としては、これから教員の大量退職の時期を迎え、若手教員、中堅教員の役割がこれまで以上に重要になってくることがあります。
若手教員については、初任者あるいは2~3年目の教員であっても即戦力として充実した授業をしてもらわないといけない。また、中堅教員については、ベテラン教員がたくさん退職するなかで中核となる教員になってもらう必要があります。そこで、若手教員の授業力を高めるために2・3年次授業研究と4年次授業観察を必修研修として制度化し、各学校の授業力向上の中核となるリーダーを養成するために東京教師道場を開設したのです」
2005年度から「2・3年次授業研究」を開始
この結果、2006年度時点での東京都の教員研修は次のようなしくみになる(図1参照)。まず、研修全体は、教員全員に受講が義務付けられる「必修研修」、教員が自らのキャリアプランに基づいてテーマを選び受講する「選択課題研修」、管理職など職に応じて受講する「職層研修」で構成される。
必修研修は、従来からある「初任者研修」と「10年経験者研修」、新たに設けられた「2・3年次授業研究」、「4年次授業観察」だ。また、「選択課題研修」にはステージI・II・IIIという区分がある。
ステージIは、初任者研修を終えて(2年目)から10年経験者研修を迎える(10年目が終わる)まで。ステージIIは、11年目から20年目まで。ステージIIIは、21年目から退職時までとなる。この選択課題研修は数多くの種類・講座があるのも特徴。2006年度の場合、講座は188で、その定員は2万4325人にのぼる。東京教師道場も選択課題研修の1種類だ。
なお、必修研修は、都立学校(高校および一部中学校)教員については同センターが実施し、主として区市立小中学校教員については区市教育委員会が実施する。
校長などが対象教員の授業を見て指導・助言
2・3年次授業研究は、都立学校については2005年度から開始(公立小中学校は2006年度以降の予定)している。対象者は初任者研修を修了した教員全員だ。対象教員は、この研修用のテキストなどを参考にしながら年間授業計画に基づく授業を実践し、日常的に授業力の向上に務める。そして、校長などが授業を見て、指導や助言を行う。
「校長や副校長、あるいはベテランの教員が少なくとも年3回(3コマ)、授業を見て、ここをこうした方がいい、といった指導や助言を行います。また、校外での研修もあります。夏期に半日を1回として計4回(2006年度の場合は連続2日間、午前・午後の計4回)、主に指導方法について研修を受けます。これらを2年間、実施します」
4年次には指導主事などが授業を観察
2年間の研修後、対象教員は成果と課題を校長に報告し、校長は研修修了者として認定する。そして、翌年度には4年次授業観察を行う。
「4年次授業観察は、2・3年次授業研究の成果を確認することを目的としています。実施方法は、研修センターから指導主事や教授(退職校長等の学習指導専門員)が学校に出向いて、授業力という観点から対象教員の授業を見て分析します。授業終了後は、本人と校長に対して、改善すべき点などについて指導や助言を行います。授業観察は原則として年1回ですが、必要があればもう1回行います」
この4年次授業観察で、初任者研修から続く若手教員向けの必修研修は一区切りとなり、その後は、教員各自が選択課題研修を受講することになる。
なお、守屋課長のいう「授業力」とは、「東京都公立学校の『授業力』向上に関する検討委員会」が報告書にまとめたもので、①使命感、熱意、感性、②児童・生徒理解、③統率力、④指導技術(授業展開)、⑤教材解釈、教材開発、⑥「指導と評価の計画」の作成改善、という6つの要素で構成される。
「校長や副校長、あるいはベテランの教員が少なくとも年3回(3コマ)、授業を見て、ここをこうした方がいい、といった指導や助言を行います。また、校外での研修もあります。夏期に半日を1回として計4回(2006年度の場合は連続2日間、午前・午後の計4回)、主に指導方法について研修を受けます。これらを2年間、実施します」
参加者が相互に研鑽する
「東京教師道場」
同センターの研修制度のなかで最も新しいのが、2006年4月から始まった東京教師道場だ。ネーミング自体がユニークだが、これには、たんに講義を聞くのではなく参加者が相互に磨き合う場、という意味も込められている。そのため参加者も「部員」と呼ばれる。
すでに多様な研修講座を整えている中で、東京教師道場を開設した目的や通常の研修との違いを守屋課長は次のように説明する。
「東京教師道場は、中堅にさしかかった教員の中からリーダーを育てることをめざしたものです。具体的な目的としては、参加する教員の授業力を高めることと、他の教員を指導できる資質・能力を養成して校内研修の活性化につなげることが2本柱になっています」
部員の対象者は、東京都公立学校(小学校、中学校、高校、盲・ろう・養護学校)の経験5年から10年程度の教員。本人の希望をもとに校長が推薦し、推薦者の中から同センターが指名を行う。研修組織は、教科ごとに編成される「組」と、その組のなかで校種ごとに分かれる「班」で構成される。
各班には2人の「助言者」が配置され、部員に助言を行う。この助言者もベテラン教員から希望を募り、校長が推薦して同センターが推薦者の中から指名する。また、各組には指導主事や教授が配置され、部員や助言者への指導などを行う。研修期間は2年間。1年目、2年目とも年間12回(半日を1回とする)の研修を行う。
「内容は授業研究が中心で、1年目は部員の授業力を高めることを目標にしています。まず助言者が模範授業を行ったのち、部員が順番に授業を行います。そして、それぞれの授業について部員および助言者が、ここはこうすればよかったのではないか、といった討論をします。
さらに、指導主事や教授が、部員や助言者が気づかないような点を指摘したり、理論的な裏付けを与えたりします。2年目は、主に他の教員に指導や助言ができる能力を育てていくことを目標にしています」
教師道場修了後は「授業力リーダー」の候補に
道場修了後、部員は「授業力リーダー(仮称)」の候補者になる予定である。そして、その後の実績によって東京都教育委員会が「授業力リーダー」に指名し、所属する学校や近隣の学校での校内研修などに力を発揮することが期待されている。
東京教師道場は初年度、部員411人(定員400人)、助言者121人(定員100人)でスタートした。どちらも定員より多いが、これは「希望者はできるだけ入れたいと考えたため」(守屋課長)だ。部員は決定者をやや上回る希望者があり、助言者は決定者の倍の希望者があったそうで、関心の高さがうかがえる。
2・3年次授業研究、4年次授業観察、東京教師道場はまだ始まったばかり。こうした新たな試みが、若手教員の授業力向上やリーダー養成に、どのような成果を上げていくのか大いに注目される。