EYE's Journal

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53-7

シリーズ53 令和3年度大学入学者選抜
Part.7 
学校推薦型選抜の概要(2)
「推薦入試」から「学校推薦型選抜」へ 
その内容をチェックする

文: 寳諸 宏
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
公開:

2021年度から大学入学試験の名称が一新され、一般入試、AO入試、推薦入試はそれぞれ「一般選抜」「総合型選抜」「学校推薦型選抜」になった。推薦入試の大部分が学校推薦型選抜に引き継がれていることなどを前回、学校推薦型選抜の概要(1)で紹介した が、変更点をさらに詳しくみていこう。

「学校推薦型選抜の概要(1)」はこちら

前年度との違いを比較してみる

文部科学省では毎年度『大学入学者選抜実施要項』を提示している(以下「実施要項」)。これは、入学選抜の実施方法等の概要と指針を示した、入学選抜のガイドラインのようなものだ。

実施要項の2020年度と2021年度の推薦選抜に関する部分を比較することで、名称が推薦入試から学校推薦型選抜へと変わっただけでなく、他の違いも見えてくる。

調査書だけでは入学できない

実施要項の2020年度版と2021年度版の推薦選抜に関する部分を比較して、最も変わったのが、学力検査などの扱いだろう。

20年度版は推薦選抜の定義を「出身高等学校長の推薦に基づき、原則として学力検査を免除し、調査書を主な資料として評価・判定する入試方法」としている。

一方、21年度は「出身高等学校長の推薦に基づき、調査書を主な資料としつつ、以下の点に留意して評価・判定する入試方法」である。21年度の「以下の点に留意して」以外は大きな違いがないようにも見えるが、20年度の「原則として学力検査を免除し」の部分が21年度では削除されている。

そして20年度は調査書だけで判断できない場合に大学の独自試験、センター試験、資格・検定の結果等を活用するとされていた。これが21年度の「以下の点に留意して」の部分でもあるが、自らの考えに基づき論を立てて記述させる評価方法(小論文等)、プレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目に係るテスト、資格・検定試験の成績等、共通テストのうち「いずれか一つを必ず活用」すること、またその旨を要項に必ず記載することとされている。

つまり受験者の評価に関する要件が、「選択的に利用」から「必ず一つは利用」となり、より厳格化したといえる。これは総合型選抜でも同様だ。

大学教育で欠かせない
基礎学力の把握

言い換えれば、調査書のほかに受験生の客観的な基礎学力を見せなさい、と言っているのだ。小論文やプレゼンテーションなどは学力より論理的思考力という方が妥当かもしれないが、それも含めての基礎学力である。

調査書には学力指標として「学習成績の状況」(評定平均値)が記載されている。しかし、これは同じ学校の生徒間での相対的な位置を示すもので、客観的な指標とはいえないのだ。

基礎学力を求める背景として、たとえば2008年の中教審の答申『学士課程教育の構築に向けて』などでも指摘されてきたことだが、グローバル化時代の大学教育にあって、国際的な競争力・水準を維持するためにも、高等教育・専門教育に対応可能な基礎学力の把握が不可欠という入学選抜の方向性が示されている。2021年度の学校推薦型選抜では、その方向性がより鮮明になったわけだ。

個性や多様性を重視する総合型選抜や学校推薦型選抜の役割を尊重しつつも、より基礎学力重視の方向へシフトしたといえるだろう。

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